Deep SkyのCO2直接回収拠点に、アルバータ州が5億円支援 「 CO2除去」実証へ加速

村山 大翔

村山 大翔

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アルバータ州政府は6月25日、同州イニスフェイルで建設された「Deep Sky Alpha」直接空気回収(DAC)技術試験・商業化センターに対し、500万カナダドル(約5億円)の支援を決定した。資金は州の技術革新・排出削減(TIER)基金を原資とする排出削減アルバータ(ERA)を通じて拠出され、設計・建設・運営の加速に充てられる。

Deep Sky Alphaは世界初のDAC技術最適化・商業化専用拠点となる計画で、既に「機械的完成」に達し主要機器の設置を完了した。今夏から運転開始を予定し、年内に初の認証済みカーボンクレジットを発行する見込みである。

この施設では最大10種類のDAC技術を同時に運用し、規模拡大とコスト低減の最適化を図る。年間3,000t-CO2、10年間で累計30,000t-CO2の除去を目標に据え、回収後の液化CO2をトラック輸送で認可取得済みサイトへ圧入・地下貯留する。

ERAのジャスティン・リーマーCEOは「Deep Skyへの投資はアルバータ州の排出削減での世界的リーダーシップを支えるものであり、レガシー排出の直接除去を通じて他の気候解決策を補完する」と述べた。アルバータ州環境・保護区担当大臣のレベッカ・シュルツ氏も「制約的な規制や罰金的な課税ではなく、産業界と技術革新を支援しながら排出削減を進める」と強調している。

Deep Skyはマイクロソフトやカナダロイヤル銀行などのカーボンクレジット購入誓約を背景に、ビル・ゲイツ氏のブレイクスルー・エナジー・カタリストから4,000万ドル(約64億円)の出資を受けるなど急成長中だ。総事業費は5,800万ドル(約93億円)を超え、100人規模の雇用を生むほか、地域経済に今後10年間で1億ドル(約16億円)超の波及効果を見込む。

DACは排出現場を対象とする従来型CCS(炭素回収・貯留)と異なり、大気中のCO2を直接回収できる点で注目され、カーボンクレジット市場拡大を支える重要技術と位置づけられる。今後、アルバータ州の石油・ガス、電力、セメント、農業関連分野の脱炭素化を支える技術基盤としての役割が期待される。

Deep Sky Alphaは2025年夏に稼働を開始し、年末までに初回のカーボンクレジット発行を予定している。

参考:https://www.eralberta.ca/media-releases/taking-carbon-capture-to-new-heights/