ニュージーランド航空 「自国の森」で炭素除去を推進 8,000トンの自然由来カーボンクレジットを購入へ

村山 大翔

村山 大翔

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オークランドを拠点とするニュージーランド航空(Air New Zealand)は、ネイティブ森林再生プロジェクトを展開するプラットフォーム「マイ・ネイティブ・フォレスト(My Native Forest)」と提携し、2030年までに合計8,000トン分の炭素除去カーボンクレジットを購入する契約を締結した。自国産の自然由来カーボンクレジットを国際認証付きで確保するのは同社初の試みであり、同国のボランタリーカーボンクレジット市場形成に向けた一歩となる。

契約は3段階で実施され、2028年に500トン、2029年に2,500トン、2030年に5,000トンのカーボンクレジットが順次納入される予定だ。これらのカーボンクレジットは1トンのCO2除去を表し、国際基準に基づいて検証・登録される。

対象となる森林再生地域はカンタベリー、ネルソン、マールボロ、タイラフィティ(ギズボーン)、ワイカト、オークランド、ノースランドなど広範にわたる。再生活動には地元の苗木業者、施工業者、害獣駆除団体、地域コミュニティなどが関わり、気候対策のみならず生物多様性の回復や地域経済の活性化も期待されている。

ニュージーランド航空のチーフ・サステナビリティ&コーポレートアフェアーズ責任者キリ・ハニフィン氏は、「ネイティブフォレストの植林には時間がかかるため、今の段階で将来の供給を確保することが重要だ。自国の生物多様性保全や害獣対策の副次的効果を持つこの取り組みは、国営航空会社として非常に意義深い」と述べた。

同氏はさらに、航空業界が脱炭素化の最も難しい分野の一つであると指摘し、「持続可能な航空燃料(SAF)の普及や機体更新、代替推進技術の導入は高コストで外部依存度が高い。だからこそ、高品質なカーボンクレジットがネットゼロ達成の重要な要素となる。ニュージーランドの自然環境と国際的信頼はその強みだ」と強調した。

マイ・ネイティブ・フォレストの共同創業者ミッチェル・マクラフリン氏は、「この提携は、カーボンファイナンスがいかに大規模なネイティブ森林再生を後押しできるかを示している」と述べ、「ネイティブ植林はもはや善意の活動ではなく、土地所有者にとって経済的に実行可能な選択肢になりつつある。信頼性の高い収益源を生み出すことで、生物多様性回復や水質保全、土地のレジリエンス強化を進めることができる」と語った。

同氏によると、今回の資金は従来であれば海外に流出していた炭素クレジット購入資金を国内の森林再生へ直接還流させることになる。これにより、1トンの炭素除去が気候変動対策のみならず、地域の雇用と生態系保全に貢献する「多面的価値」を生み出すと説明した。

ニュージーランド航空は2050年までのネットゼロ達成を掲げており、年内にも国内の別の自然由来除去クレジット供給者との契約締結を予定している。航空業界全体が高品質カーボンクレジットの確保を急ぐ中、自国の自然を基盤とする取り組みは、ニュージーランドのボランタリーカーボンクレジット市場拡大の試金石となりそうだ。

参考:https://www.airnewzealandnewsroom.com/press-release-2025-air-new-zealand-backs-new-zealand-nature-with-its-first-internationally-verified-carbon-removals