スイスの資源取引大手トラフィギュラ(Trafigura)が参画する国際組織のミオンボ修復同盟(Miombo Restoration Alliance)は1月29日、アフリカ4カ国で大規模な炭素除去(CDR)プロジェクトを開始した。
本事業はパリ協定第6条に基づく国際的なカーボンクレジット取引を前提としており、モザンビーク、ザンビア、タンザニア、マラウイの計67万5,000ヘクタールで実施される。在来種の復元やアグロフォレストリーを通じて、プロジェクト期間中に計5,000万トン以上のCO2除去を見込む。
同プロジェクトは、事業期間全体で10億ドル(約1,500億円)を超える直接支出と投資を予定している。
これはアフリカにおける自然ベースのCDR事業として最大規模であり、約10万人の地域住民や農家、各国政府に収益を還元する体制を構築した。2024年のニューヨーク・クライメート・ウィークで発足した同同盟は、設計段階から本格的な実施フェーズへと移行したことになる。
カーボンクレジット創出の根拠となるパリ協定第6条は、国を跨いだ排出削減量の取引を認める国際ルールである。今回始動した4つのプロジェクトは、同条項に準拠した「高品質」な除去クレジットを生成し、グローバル企業のオフセット需要に応える。科学的助言にはカーボン・ダイレクト(Carbon Direct)が、支払いインフラにはテラスペクト(Terraspect)が参画し、透明性の高い資金還流を担保する。
ミオンボ・マラウイ修復
55万ha超の広大な修復。アフリカ最大級の在来種苗圃(年間1,100万本)を完備。
ミオンボ・ザンビア・アグロフォレストリー
4.5万人の農家が参加。カシューナッツ市場の育成と炭素収益の両立を図る。
ミオンボ・モザンビーク修復
ゴロンゴーザ国立公園の緩衝地帯2.5万haを修復。野生動物の回廊を保護。
ビクトリア湖アグロフォレストリー
単一栽培から多様な森林農法への転換を支援。土壌肥沃度と食料安全保障を向上。
マラウイでは、モタ・エンギル(Mota-Engil)傘下のママランド(Mamaland)と協力し、55万ヘクタール超の保全と修復を進める。アフリカ最大級の在来種苗圃を完備し、年間1,100万本の苗木を供給する体制を整えた。またザンビアでは、ETGクライメート・ソリューションズ(ETG Climate Solutions)を通じて4万5,000人以上の農家を支援し、カシューナッツ市場の育成と炭素収益の両立を図る。
トラフィギュラの炭素部門責任者であるハンナ・ホーマン氏は「パリ協定第6条の下で民間資本を大規模に動員する枠組みを証明できた」と述べた。続けて同氏は、ホスト国政府のリーダーシップに感謝し、世界の顧客へ高品質なクレジットを提供するとともに、地域社会へ長期的な利益を届ける決意を表明した。
ICCFグループ(ICCF Group)の最高経営責任者(CEO)であるジョン・ガント氏は「アフリカ主導の本イニシアチブは、地球最大級の修復事業になる軌道に乗っている」と指摘した。同氏は、11のアフリカ諸国政府が主導するこの官民パートナーシップが、地域全体の生態系保全とコミュニティへの重要資源の配分を加速させると期待を寄せた。
ミオンボ修復同盟は今後、ミオンボ・イニシアチブ署名国である11カ国全体への事業拡大を目指す。今回の4プロジェクトは、国連の「世界修復フラッグシップ」に認定された手法などを活用し、40年間にわたる長期的なCO2吸収を継続する。市場では、第6条に基づく対応調整済みのクレジット供給が、2026年以降の炭素市場における信頼性の指標となると予測されている。
今回のミオンボ修復同盟(MRA)による大規模プロジェクト始動は、単なる「アフリカでの植林事業」という枠を超え、炭素市場のゲームチェンジを象徴しています。
特筆すべきは、これまでボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)の混乱で懸念されていた信頼性の問題を、パリ協定第6条という公的な枠組みを取り込むことで解消しようとしている点です。トラフィギュラのような世界的なコモディティ業者が1,500億円規模の資金を投じる背景には、将来的に「第6条準拠のクレジット」以外は市場から淘汰されるという強い予測があります。
日本の事業者にとっても、二国間クレジット制度(JCM)以外で第6条に準拠した大規模な供給源が確保されることは、国際的な排出権確保の選択肢を広げる好材料となるでしょう。
今後は、実際に「対応調整(Corresponding Adjustments)」が各国政府によってどの程度のスピードで処理されるかが、この巨大プロジェクトの成否を分ける鍵となります。


