アブダビ最高財政経済評議会(Supreme Council for Financial and Economic Affairs (SCFEA))は2026年1月16日、首長国全域における二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)活動を統括する新たな「炭素回収政策」を発表した。
この政策は、包括的な規制枠組みを構築することで、産業部門の脱炭素化を加速させるとともに、アブダビを中東における低炭素イノベーションの拠点として位置づけることを目的としている。SCFEAは、この枠組みが持続可能な経済成長と新たな雇用創出を牽引し、現地の産業競争力を強化する重要な柱になるとの見解を示した。
新政策の核心は、CCUSの展開に向けた明確な法制度と規制基盤の確立にある。
これには、技術的な運用基準の策定や、効率的なインフラ整備に向けた調整機能の強化が含まれる。特に、民間企業の参入を促す環境整備を重視しており、官民連携による二酸化炭素(CO2)削減ソリューションの商用化を加速させる方針だ。
政策の主要な柱の一つとして、国内の地質資源を最大限に活用した中長期的なCO2貯留の最適化が挙げられている。アブダビは、複数の事業者が共同利用できる「共有型」の回収・輸送インフラを整備することで、投資効率を向上させる戦略を描く。共通施設の開発を推進することにより、排出削減が困難なハード・トゥ・アベートセクターにおける導入コストを低減し、CCUSの大規模な社会実装を目指す。
SCFEAは、この政策がアラブ首長国連邦(UAE)の国際的な気候変動対策へのコミットメントを反映したものであると強調した。戦略的な投資を呼び込み、CCUS活動を適切に規制することで、生態系の保護と資源の持続可能性を次世代にわたって確保する狙いがある。
今回の政策発表を受け、アブダビでは2026年を通じて関連する具体的な法細則の策定が進められる見通しだ。政府機関、産業界、技術プロバイダーによるパートナーシップの強化が今後の焦点となり、地域全体での脱炭素化に向けた動きがさらに加速するとみられる。
今回のアブダビによる政策策定は、単なる環境規制の導入にとどまらず、カーボンクレジット市場、特にエンジニアリングベースの炭素除去(CDR)における産油国モデルの確立を意図している。
これまでアブダビは、国営石油会社ADNOC等を通じてCCUS技術への投資を先行させてきたが、今回「最高財政経済評議会」が主導して規制枠組みを明文化した点は極めて重要である。
これは、CCUS由来の炭素除去活動に法的裏付けを与え、将来的に高付加価値なカーボンクレジットを発行・輸出するためのインフラの土台となるからだ。
先行するサウジアラビアの「中東グリーン・イニシアチブ」との主導権争いも背景にあり、日本企業にとっては、中東発の高品質なCDRクレジットの調達や、共有インフラ構築における技術参画の機会が拡大する転換点となるだろう。


