Summit Carbon Solutions、8.9Bドル規模のCCSプロジェクトに痛手。新ルートで再挑戦へ
米国中西部最大級の炭素回収プロジェクトが、大きな壁に直面している。2025年4月、サウスダコタ州公益委員会(PUC)はSummit Carbon Solutionsのルート許可申請を却下したとBloombergが報じた。これにより、総延長約2,500マイル(約4,000km)、総工費89億ドル(約1兆3,500億円)に及ぶCO2輸送網の中核部分が頓挫することとなった。
ルートの内容が不十分、州法に合致せず
PUCの委員であるKristie Fiegen氏は、「提出された計画には法的・内容的な不備があり、現状では認可できない」と指摘。また、サウスダコタ州では2024年に“炭素パイプラインに対する強制収用権(Eminent Domain)を制限する法律”が制定され、土地所有者の合意形成が必須となった点も大きな障壁となった。
Summit側は「失望しているが、南ダコタでの事業継続を諦めてはいない」と表明。今後は抵抗の強い地域をルートから外し、より小規模なプランで再申請する方針を明かしている。
中西部のトウモロコシ経済と炭素市場をつなぐ野心的計画
Summitの計画は、アイオワ、ミネソタ、ネブラスカ、ノースダコタ、南ダコタにまたがる2,500マイルのパイプラインを通じて、エタノール製造施設から排出されるCO2をノースダコタ州の地下に恒久貯留するというもの。バイオ燃料の脱炭素化により、低炭素燃料市場での競争力を強化する狙いがあった。
すでにアイオワ、ミネソタ、ノースダコタでは承認を獲得していたが、今回の南ダコタでの拒否は、全体の構造に重大な影響を及ぼす可能性がある。
地元の声と今後の展開
土地所有者団体「Dakota Rural Action」のEd Fischbach氏は、「これは地元住民の勝利であり、地域主導のガバナンスの勝利でもある」と喜びを語る。一方で、Summit側は訴訟には踏み切らず、ルートの再設計と自主的な合意形成の道を模索する姿勢を見せている。
農業州としての顔も持つサウスダコタ州では、エタノール産業がコーン需要の約40%を占めるとされており、同プロジェクトの先行きは、地域経済にも大きな影響を及ぼしかねない。