米コロラド州に拠点を置く1089 Inc.(1089インク)は2026年2月26日、保険ブローカーのPrice Forbes(プライス・フォーブス)およびカーボン保険専門のOka(オカ)と提携し、世界初となるカーボンクレジット資産向けの保険フレームワークを発表した。この取り組みは、ロイズ・シンジケート1922の引き受けにより、最も排出量の多い輸送・エネルギー部門におけるカーボンクレジット市場の金融的成熟を加速させることを目的としている。
今回の提携により、1089 Inc.が提供する次世代燃料向けカーボンクレジット資産「CX89 Advanced Fuels Carbon Assets」に対し、制度化されたリスク補償が組み込まれる。従来のボランタリーカーボン市場(VCM)では、クレジットの無効化や価値低下といったリスクが機関投資家による大規模参入の障壁となっていた。新フレームワークでは、クレジットの生成から償却までの間に発生し得るパフォーマンス損失をカバーすることで、カーボンクレジットを「環境的な免罪符」から「予測可能な金融資産」へと転換させる。
具体的には、航空、海運、鉄道といった輸送部門や、データセンター、製造業、発電などのエネルギー多消費産業におけるスコープ1からスコープ3までの排出量削減を支援する。保険による裏付けがあることで、企業は自社のサプライチェーンに関連する燃料由来の排出量に対し、バランスシート上の強度を保ちながら投資することが可能となる。
プライス・フォーブスのチーフ・ブローキング・オフィサーであるスペンサー・リー氏は、「ロイズのキャパシティを確保し、組み込み型の無効化補償を実現したことで、透明性の高いリスク移転の枠組みが完成した」と述べ、市場の流動性向上に自信を示した。
これまでカーボンクレジット市場は、制度的裏付けの欠如からボラティリティが高いと指摘されてきた。今回の「CX89」資産は、不変的な会計処理と登記簿による監視、そして保険による防護策を統合している。これにより、低炭素燃料の生産拡大を目指す企業に対し、市場の需要を直接的な金融インセンティブへと変換する道筋を提示した。
1089 Inc.のルーク・ハンリーCEOは、「複雑なグローバル市場において、カーボンクレジットを金融の世界に合わせるのではなく、金融の仕組みをカーボンクレジットに持ち込む方が現実的だ」と強調している。
カーボンクレジット市場における最大の懸念点であった「無効化リスク」に対し、ロイズのシンジケートが動いた意義は極めて大きい。これはカーボンクレジットが、単なる企業のCSR活動の道具から、銀行や投資家が担保価値を認め得る「金融商品」へと脱皮し始めたことを示唆している。日本企業、特に国際航路を持つ海運業者や航空業者にとって、保険付きカーボンクレジットの活用は、脱炭素コストの予見可能性を高める有力な選択肢となるだろう。
