住友商事、英セメント業界脱炭素に投資「ピーク・クラスター」で年間300万トンのCO2輸送へ

村山 大翔

村山 大翔

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住友商事は、英国で進められている大型CO2削減プロジェクト「ピーク・クラスター」に約80億円(5,960万ポンド)を投資すると発表した。英国子会社のサミット・エナジー・エボリューション(SEEL)を通じ、二酸化炭素(CO2)を輸送するための新しいパイプラインを建設する。

このプロジェクトは、英国の中心部・ピークディストリクト周辺にある4つのセメントと石灰工場から、年間約300万トンのCO2を回収し、海底へ運ぶ仕組みだ。

対象となる工場は、英国全体のセメント・石灰生産の約40%を占める。パイプラインで集めたCO2は、東アイリッシュ海の海底にある「モアカム・ネットゼロ」貯留施設に送り、永久に封じ込める。

英国政府は、2035年までに年間5,000万トンのCO2を回収する目標を掲げている。ピーク・クラスターは、その目標達成に向けた重要な一歩となる。

セメントや石灰の製造過程では、燃料を変えるだけでは削減できない「工程由来の排出」が発生するため、CO2の回収と貯留(CCS)が不可欠だ。この分野の脱炭素は世界的な課題で、日本でも注目が高まっている。

今回のプロジェクトには、住友商事のほか、英国政府系のナショナル・ウェルス・ファンド(NWF)、セメント大手のターマック、ブリードン、ホルシムUK、シグマロックなどが出資している。

住友商事と英国の低炭素エネルギー会社プログレッシブ・エナジーが共同出資する会社が、事業主体「ピーク・クラスター・リミテッド(PCL)」を運営する。最終投資決定は2028年を予定している。

住友商事は、1970年代から油田開発で培ったパイプライン事業の経験を活かし、今回のCO2輸送事業にも挑む。2023年には英国でCO2貯留ライセンスを取得し、2024年にはアラスカでのCCS事業も検討を始めた。アラブ首長国連邦(UAE)でも同様の計画を進めており、グローバルで脱炭素インフラを広げる方針だ。

参考:https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/news/topics/2025/group/20250708