農産物の国際取引を手掛けるシンガポールのデイビス・コモディティーズ(Davis Commodities)が、カーボンクレジットを使った新しい取引モデルに乗り出す。15日、同社は「カーボンクレジット取引部門」を新設すると発表した。これにより、環境に配慮した農産物輸出とカーボンオフセットをセットにしたサービスを始める。
最初に対象となる商品は、Bonsucro認証の砂糖と、ISCC認証の米。これらの商品には、森林再生や再生型農業で得られる認証済みのカーボンクレジットが付与される。購入した企業は、そのまま「ネットゼロ達成」に活用できる仕組みだ。
デイビスは、Gold StandardとVerraが認証したカーボンクレジットを使う予定で、取引の透明性を高めるため、ブロックチェーン技術も導入する。顧客は専用のデジタルダッシュボードで、クレジットの保有量や使用状況をリアルタイムで確認・管理できるようになる。
同社はこの新事業について、今後3年で2,000億ドル(約32兆円)の市場機会があると予測。第一段階として、日本とEU向けに「脱炭素付き砂糖」の輸出を始める。2026年には米やパーム油にも広げ、東南アジアや西アフリカ市場にも展開する予定だ。
また2027年には、自社のカーボンクレジット取引システムを、他の農家や物流企業にも開放する計画だ。
エグゼクティブチェアのリ・ペン・レック氏は、「カーボンクレジットはこれからの農産物取引に欠かせない。環境対策と企業の競争力を同時に支える仕組みだ」と述べた。
今回のモデルでは、従来の契約よりも価格にプレミアムがつく可能性があり、Davisは2026年末までに1,000万〜1,500万ドル(約16億〜24億円)の追加収益を見込んでいる。しかし、市場環境や顧客の反応によっては実現が難しくなるリスクもある。
同社はすでにブロックチェーンを使ったトレーサビリティや、ソラナを使ったデジタル資産管理にも取り組んでおり、今回の取り組みはその延長線上にある。