カーボン・アップサイクリング・テクノロジーズ(Carbon Upcycling)と北米大手セメント会社のアッシュグローブ(Ash Grove、CRHグループ)は、カナダで初となる商業規模の「炭素回収・再利用(CCU)」施設の建設を正式にスタートさせた。
この新施設「Carbon 1 Mississauga」は、2026年の稼働を目指しており、セメント製造時に出るCO2を回収し、地元の産業廃棄物と反応させることで、高品質な低炭素セメント材料(SCMs)を生み出す。完成すれば、年間約3万トンのセメント代替材料を生産できる見込みだ。
カーボン・アップサイクリングのアプルヴ・シンハCEOは、「この施設は、地域・産業・気候の調和を実現する新しい形のものづくり。今すぐに始めることが大切だ」と語っている。
本プロジェクトには、カナダ政府から最大1,000万カナダドル(約10億6,000万円)の支援が決定しており、支援元には以下の3つの制度が含まれる。
- 次世代製造を支援する「Sustainable Manufacturing Program」
- 環境省の「Low-Carbon Economy Fund」
- 国立研究機構(NRC)の産業技術支援プログラム(IRAP)
アッシュグローブのセルジュ・シュミット社長も「この施設は、建設業界の脱炭素に向けた大きな一歩」と述べ、国内の技術と人材を活用したプロジェクトであることに誇りを示した。
この施設には、CRHグループのベンチャー投資部門「CRH Ventures」も出資しており、セメント製造における炭素再利用技術の拡大を目指している。CRHに加え、CemexやTITANなど世界の大手セメント企業もカーボン・アップサイクリングに投資している。
セメント業界は排出削減が難しい分野として知られており、今回のプロジェクトは、CO2の直接回収に加えて、産業廃棄物の有効活用という「循環型経済」の観点でも注目されている。
Carbon 1 Mississaugaは、今後の低炭素建設需要に応えるモデルケースとして、国内外での展開も期待されている。