カザフスタン草原50万ヘクタールから大規模な土壌カーボンクレジットの創出を目指す

村山 大翔

村山 大翔

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カザフスタン拠点の農業スタートアップ rTek は、2025年5月27日、米国ボルダーを本拠とする環境資産の測定・報告・検証(MRV)のグローバル企業 Perennial と、10年間の独占パートナーシップを締結した。カザフスタンの劣化草原50万ヘクタールを再生し、高品質な土壌カーボンクレジットの創出を目指す。

今回の提携は、rTekが設計・実装するカーボンクレジットプロジェクトにおいて、Perennialの高度なデジタル土壌マッピング(DSM)および土壌有機炭素(SOC)モデリング技術を活用するものである。VerraのVM0032基準に準拠し、2025年にベースラインモデル作成を開始する計画だ。

対象地域は、カザフスタン全土に広がる1億8400万ヘクタールの放牧地のうち、まずは50万ヘクタール。これにより、同国が国際炭素市場の新たなフロンティアとしての地位を確立することが期待される。

本プロジェクトは、国連食糧農業機関(FAO)および地球環境ファシリティ(GEF)の支援を受け、「カザフスタン持続可能なアグロフォレストリー・放牧地プロジェクト」の一環として展開される。その中の活動「国際炭素市場へのアクセス支援」は、カーボン取引が民間投資を誘致し、持続可能な牧草地管理の財政的持続性を高める起爆剤になることを目指している。

rTekのマネージング・パートナーであるスチュアート・ボウリン氏は、「農家や政府の期待と懐疑の両方に応え、再生型農業の具体的な成果を示すときだ」と述べ、PerennialのモデルとrTekのフィールドデータの連携が市場参入の鍵になると強調した。

一方、PerennialのCEOであるジャック・ロズウェル氏は、「草原は地球表面の約半分を占めながら、気候対策では軽視されている。しかし、その炭素貯留力と農村経済への貢献度は計り知れない」と語り、草原再生の重要性を訴えた。

この提携は、カーボンプロジェクト開発者と独立MMRV企業との間で初となる10年間の包括契約であり、新興市場における透明性の高い自然解決策(NbS)をスケール化する上での重要な節目と位置づけられている。

rTekとPerennialは、投資家やカーボンクレジット購入者に対して、最高水準の信頼性を持つNbS由来のクレジットへの参画を呼びかけている。

参考:https://www.perennial.earth/post/perennial-and-rtek-launch-strategic-10-year-exclusive-mmrv-partnership-to-regenerate-globally-degraded-grasslands