英国政府は、炭素除去(CDR)を自国の排出量取引制度(UK ETS)に取り込む方針を正式に打ち出し、2029年からの本格的な運用を目指すと発表した。2024年に実施されたパブリックコメントには、産業界や金融、学術、土地利用分野から160を超える団体が意見を寄せた。
新制度では、二酸化炭素を確実に200年以上封じ込めたと確認されたCDRプロジェクトだけが、排出枠(アローワンス)を後払いで受け取る仕組みとなる。対象はまず英国国内で実施された除去のみとし、制度の信頼性を高める。
排出枠の総量は維持され、CDRの導入によって全体の削減目標が緩まないようにする。また、既存の排出枠(UKA)とは別に、「CDR専用のユニット」を新設する案も検討中で、技術的な評価を経て判断される見通しだ。
CDRプロジェクトが市場に参加しやすくなるよう、専用オークションや移行期の供給管理ルールも整備される。政府はこれを2050年ネットゼロ目標の実現に向けた重要な一歩と位置づける。
ただし、森林を使ったCDR(例:植林)を対象に含めるかどうかは未定で、2025年後半にさらなる検証と議論が行われる。
廃棄物発電大手のenfinium社CEO、マイク・モーズリー氏は「英国は世界でも先駆けてCDRをETSに統合しようとしており、廃棄物発電とCO2回収を組み合わせる事業の経済性が大きく向上する」と述べた。また、廃棄物分野では2026〜2027年を「測定・報告・検証(MRV)だけの移行期間」とし、ETSへの正式参加に備える。
この方針により、英国はCDRを国の排出削減制度に正式に取り込む初の主要国となる可能性があり、信頼性の高い除去技術への投資拡大が見込まれている。