シェル(Shell)の技術部門シェル・キャタリスツ&テクノロジーズ(Shell Catalysts & Technologies)と、フランスのエンジニアリング大手テクニップ・エナジーズ(Technip Energies)は、排ガスからCO2を回収する「ポストコンバッション型カーボンキャプチャー」で、世界独占の業務提携を結んだ。
今回の提携により、両社はシェルの「CANSOLV(キャンソルブ)CO2キャプチャーシステム」を使ったプロジェクトを、計画から導入、運用まで一括して提供する。これにより、企業がCO2回収設備を導入しやすくなると期待されている。
テクニップのCEO、アルノー・ピエトン氏は「難しいとされる重工業の脱炭素化を、もっと確実に、もっと安く実現する」とコメント。「今回の提携は、10年以上の協業の集大成だ」と述べた。
シェルのロビン・ムールドイク氏も、「排ガス回収の導入コストを下げ、世界中で普及を進めるための新しいモデルだ」と話した。
この提携は、すでに実績がある技術に基づいている。両社は過去2年間でCANSOLV技術を使った4つの新規プロジェクトが最終投資決定(FID)に達し、すでに2件が稼働中。
その中でも、英国で建設中の「ネット・ゼロ・ティーズサイド・パワー」は、世界初のガス火力発電+CO2回収の一体型プラントとして注目されている。
CANSOLV技術は、アミン溶液でCO2を吸収し、高効率で回収する仕組み。もともと硫黄分(SO2)の除去にも使われていた技術を進化させたもので、特に鉄鋼やセメントなど排出削減が難しい産業で役立つ。
国際エネルギー機関(IEA)によると、2050年までに年間数十億トン規模のCO2回収が必要とされており、導入コストや運用の不安を解消する「一括提供モデル」は、企業の意思決定を後押しするとみられる。
CANSOLVの導入費用は、1件あたり数百億円規模とされるが、今回の提携で標準化と効率化が進めば、さらにコストは下がる可能性がある。