「二重計上リスクに保険で対応」 Gold Standard、航空向けカーボンクレジット新制度を開始

村山 大翔

村山 大翔

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カーボンクレジット認証団体のGold Standardは17日、航空業界のカーボンオフセット制度CORSIA向けに、新たな保険評価制度を始めたと発表した。2024年から2026年の第1フェーズが対象となる。

この制度は、カーボンクレジットの「二重計上」を防ぐために導入された。二重計上とは、国際的なカーボンオフセットとして使われたカーボンクレジットが、発行元の国の温室効果ガス(GHG)削減実績にも重複してカウントされてしまう問題だ。CORSIAでは、国際航空会社が排出量超過分をカーボンクレジットで相殺する際、これを避けることが求められる。

Gold Standardは2024年に、「承認済み保険」を使って二重計上リスクに備える仕組みを導入していた。今回、その仕組みを本格的に運用する。開発者は、保険を使って万が一の二重計上発生時に代替クレジットや補償金を提供することができる。

審査は保険ブローカー大手のハウデン・グループ(Howden Group)が担当し、各社の保険商品が基準を満たしているかを評価する。承認された保険は、ゴールドスタンダードの「承認保険リスト」に掲載される。

Gold StandardのCEO、マーガレット・キム氏は「CORSIAのような新しい市場へのアクセスを広げると同時に、環境の信頼性も守らなくてはならない。保険を通じてそれが実現できる」と述べた。

これまでは世界銀行グループの「MIGA(多国間投資保証機関)」の保険だけが承認されていたが、今回から民間保険にも門戸が開かれる。これにより、カーボンオフセット事業に取り組む企業が使える選択肢が広がり、市場の成長も期待される。

ハウデンのカーボン市場責任者、チャーリー・プール氏は「保険を導入することでカーボンクレジット市場の信頼性が高まる。機関投資家も安心して資本を投入できるようになる」と話している。

また、Gold Standardは今回、航空向けクレジット「GS-VER(Verified Emission Reductions)」の新しい誓約書も発表した。倒産時の対応や、昨年の国連気候会議(COP29)でのルール更新にも対応している。

CORSIAは国際民間航空機関(ICAO)が運営する国際線向けの排出削減制度で、航空会社は排出量増加分をカーボンクレジットか持続可能な航空燃料(SAF)で相殺することが義務付けられている。Gold Standardは2024年12月にCORSIA適格認証機関として認められている。

民間保険の審査は今後数週間で始まり、承認された商品はGold Standardのサイトで公開される。保険評価の透明性確保のため、第三者専門家も募集中で、応募は8月6日17時(中央欧州時間)まで受け付ける。

参考:https://www.goldstandard.org/news/gold-standard-launches-insurance-assessment-process-support-corsia-credit-eligibility