J.P.モルガンのブロックチェーン部門Kinexysは7月2日、S&Pグローバル・コモディティ・インサイツ(S&Pグローバル)、EcoRegistry、International Carbon Registry(ICR)と連携し、カーボンクレジットのトークン化を目指す新アプリケーションの試験運用を開始した。カーボンクレジット市場の標準化や透明性向上、取引効率化を目指し、ブロックチェーン技術を活用する。
今回の試験は、Kinexysのマルチアセットトークン化プラットフォーム「Kinexys Digital Assets」を用い、レジストリ層でカーボンクレジットを直接トークン化する初の試みとなる。S&Pグローバルは環境ソリューション「Environmental Registry」を用いて試験を開始し、今後「Meta Registry®」の導入も視野に入れる。EcoRegistryおよびICRはすでに各自のレジストリ上で試験を完了している。
J.P.モルガン・ペイメントの天然資源アドバイザリー責任者Alastair Northway氏は「ボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)は革新の好機を迎えており、トークン化はインフラの信頼性を高め、価格・情報の透明性向上を通じて流動性拡大を後押しする」と述べた。
試験ではアカウント管理、プロジェクト監視、クレジットライフサイクル管理を対象とし、技術接続性やデータモデル互換性、完全機能の確認を目的とする。
S&Pグローバルのエナジートランジション部門責任者Jonty Rushforth氏は「Kinexysとの協業は、我々の環境レジストリの価値と使命を実現し、ブロックチェーンを活用した資産記録・決済の効率化を進めるものだ」と述べ、Meta Registry®が金融業界に拡張されれば「カーボンクレジット市場の変革を生む可能性がある」と指摘した。
EcoRegistryのCEO Juan Duran氏は「カーボンクレジット市場の中核要素を相互接続することで、エコシステム全体の信頼と透明性を高める」と述べ、ICRのCOO Oli Torfason氏も「高潔な気候経済構築に向けた重要な一歩」と位置付けた。
Kinexysは2025年7月、カーボンクレジット市場参加者への聞き取りに基づき「ブロックチェーンがVCMで果たす役割」をまとめたレポートを発表。ブロックチェーンの透明性・追跡可能性・不変性と銀行レベルのインフラを組み合わせることでVCMに必要な信頼構築が可能であり、トークン化は市場標準化の触媒になりうると指摘した。
さらにレポートは、デジタルMRV技術によるプロジェクト品質追跡、格付け機関や保険会社との接続性強化がVCMの拡大には不可欠であると強調した。
Kinexys Digital Assetsのプロダクト責任者Keerthi Moudgal氏は「市場参加者との協働を通じ、新たなブロックチェーン技術をVCMに実装し続ける。トークン化の可能性を具体化し、VCMを根本から変革する」と述べた。
この取り組みは、JPMorgan Chaseが2023年に発表した「Carbon Markets Principles」に基づくものであり、VCMの機能向上とスケール拡大を支援する戦略の一環としている。
参考:https://www.jpmorgan.com/payments/newsroom/kda-blockchain-carbon-market-tokenization