スウェーデンの気候資金団体ミルキーワイヤー(Milkywire)は7月29日、炭素除去(CDR)企業のプランブー(Planboo)とカーボニアーズ(Carboneers)がガーナで始めるバイオ炭事業に対して、最初の購入契約(オフテイク契約)を結んだと発表した。カカオの廃棄物から炭をつくるこの事業は、地域経済への貢献と炭素削減の両立を目指す。
この新たなCDRプロジェクトは、ガーナ北部のオティ州で、カカオの廃棄物を使ってバイオ炭をつくり、大気中のCO2を長期的に隔離する取り組みである。プランブーとカーボニアーズが初めて手を組み、それぞれの技術やノウハウを活かす。
カーボニアーズは、少ない排出で炭を作れる「低排出型パイロリシス装置」と呼ばれる焼却炉の設計・開発を担当。プランブーは、炭の生産量や炭素量をリアルタイムで追跡できる独自のデジタル監視システム「MRVin™」を提供する。
このシステムには「Greenbox」という温度センサーがあり、各焼却炉に設置されて温度を監視する。さらに、カーボニアーズが開発したメタン排出の測定装置と連携することで、炭の品質や環境負荷を詳しく記録できる。
ミルキーワイヤーの気候基金「Climate Transformation Fund(CTF)」の責任者ロバート・ヘグルンド氏は、「このようなCDRプロジェクトは、気候対策だけでなく、気候変動の影響を受けやすい地域の収入やレジリエンス向上にもつながる」と語った。
ミルキーワイヤーはこのプロジェクトを含め、2025年に15件のCDR購入と3件の助成を行っている。これまでに支援したCDR事業者の数は40に達し、企業支援数ではShopify、Stripeに次ぐ規模となった。
今回採択されたCDRプロジェクトには、ナイジェリアのリリーフ・アース(Releaf Earth)やインドネシアのウェイスト・エックス(WasteX)など、バイオ炭を活用した地域密着型の取り組みも含まれる。
ミルキーワイヤーの気候基金には、クラーナ(Klarna)やスポティファイ(Spotify)など北欧の企業が出資。これらの企業は社内に「カーボン料金」を設け、炭素排出に自ら費用を課す仕組みで気候資金を創出している。
プランブーとカーボニアーズsは、今回のガーナでの取り組みを足がかりに、他の国々でも同様の分散型バイオ炭事業を展開したい考えだ。地域の小規模農家の参加を促しながら、持続可能で公正なCDRモデルの確立を目指す。