ロックフェラー財団は5月7日、新興国における石炭火力発電の早期廃止を促す新たなカーボンクレジット制度「Coal to Clean Credit Initiative(CCCI)」の正式運用を開始した。2030年までに60件の対象プロジェクトを支援し、17兆円の官民投資の呼び込みを目指す。同制度はカーボンクレジットの国際認証団体Verraが策定した新手法を活用し、石炭火力の閉鎖による排出削減量を「トランジションクレジット」として認証する。CCCIの第一号案件には、フィリピン・バタンガス州にあるSLTEC石炭火力発電所が選定された。同案件では、ACEN CorporationがシンガポールのGenZero、Keppel、日本の三菱商事およびDiamond Generating Asiaと連携し、2040年に予定されていた発電所の閉鎖時期を2030年に前倒しする計画だ。クレジット収益は代替となる再生可能エネルギーの導入やバッテリー整備、地域労働者への補償等に充てられる。国際エネルギー機関(IEA)によれば、気候目標達成には2040年までに世界の石炭火力約2,000基の閉鎖が必要とされるが、現状ではわずか15%しかコミットメントが得られていない。CCCIはこうしたギャップに対応しつつ、公衆衛生改善(年間9,900人の早期死亡回避)や雇用創出(2万9,000件)など、社会的波及効果も狙う。CCCIは、石炭火力資産の単なる救済策とならないよう、対象となるのは黒字運営中の設備に限り、かつ新規石炭建設の停止を表明している企業・国に限定される。Verraはこの仕組みについて「労働者と地域社会を置き去りにしない高品質なエネルギー転換の枠組み」として強調している。アジア太平洋地域における他の候補案件も既に検討されており、今後の展開次第では新たな炭素クレジット市場の創出につながる可能性がある。参照:https://www.rockefellerfoundation.org/news/rockefeller-foundation-announces-latest-steps-to-accelerate-community-focused-energy-transition-projects/参照:https://verra.org/new-verra-methodology-supports-coal-phase-out-and-just-energy-transition/