米シンクタンクRMIは5月1日、産業界向けにCDRの導入機会を整理した最新レポートを公表した。気候目標達成には排出削減に加え、CO2除去の早期スケール化が不可欠との見解を示し、企業に対し今こそCDR統合の検討を進めるよう呼びかけている。RMIのレポート「Seizing the Industrial Carbon Removal Opportunity」は、重工業・素材産業・輸送インフラなど、大量の物質(岩石、水、空気、炭素など)を扱う業種が、既存設備を活かしてCDRを効率的に組み込める可能性を示した。これにより、従来の大規模な初期投資を抑えつつ、脱炭素と競争力の両立が期待できる。企業はCDR開発の支援者として、原料調達、インフラ整備への出資、あるいは開発企業とのR&D連携を通じた「共創型」関与も可能である。より積極的な企業は、自社内でのCDR技術構築に踏み出すことで、新たな収益源としてカーボンクレジット販売やグリーンプレミアムの獲得が視野に入る。同レポートは、CDRを単なる環境対策にとどめず、事業モデルに戦略的に組み込むことで「カーボンニュートラル」から「カーボンネガティブ」へのシフトが現実味を帯びると指摘。EUにおける制度設計や国際市場でのCDR需要の高まりを踏まえ、産業界が早期に動くことで先行者優位を築けると提言している。RMIは、脱炭素の加速が求められる中で、産業界こそが規制形成や市場構築における主導役を担うべきだと強調しており、本レポートは日本を含むグローバル企業にとって、CDR戦略構築の出発点となる内容といえる。参照:https://rmi.org/seizing-the-industrial-carbon-removal-opportunity/