オランダ政府は、Aramis CCSプロジェクトの推進に向け、6億3900万ユーロ(約726億円)の資金支援を決定しました。これは、プロジェクトの重要インフラであるパイプライン建設からShellとTotalEnergiesが出資を取りやめたことを受けた措置です。これにより、国営エネルギー企業EBNとガスネットワーク運営会社Gasunieが中心となり、事業の最終投資決定に向けた準備が加速されます。最終決定は2026年、運用開始は2030年を予定しており、オランダの2030年までに1990年比55%の排出削減目標達成に向けた柱となります。Aramisプロジェクトとは?Aramisは、枯渇ガス田を活用して年間最大2,200万トンのCO2排出を削減することを目指す大規模なインフラプロジェクトです。産業排出源から回収されたCO2を海底下に安全に貯留することで、特に排出削減が難しい重工業セクターに脱炭素オプションを提供します。当初はShellとTotalEnergiesも主要パートナーとして参画していましたが、近年欧州エネルギー企業の間で進む「石油・ガス競争力重視」への方針転換により、両社はパイプライン投資からは撤退。それでも貯留施設の開発やCO2回収・輸送サービス提供には引き続き関与します。政府支援でプロジェクトのリスク低減へソフィー・ヘルマンス気候大臣は、「国の財政支援により、Aramisの事業リスクは大幅に軽減され、民間パートナーとの連携もより円滑になる」と述べています。さらに、オランダ政府は再生可能エネルギー拡大やEV普及促進を目的とした80億ユーロ(約9兆円)規模の追加気候対策パッケージも発表し、産業界に対するエネルギーコスト支援策も展開する方針です。Aramisの今後の展望2026年:最終投資決定2030年:運用開始、CO2輸送・貯留開始Aramisは、オランダのDelta Rhine CorridorやDelta Schelde CO2nnectionといった他のCO2輸送網との連携も視野に入れています。Shell、TotalEnergies、EBNは、Aramisに接続するための新たなCO2貯留施設開発にも共同で取り組んでいます。オランダでは2024年時点で温室効果ガス排出量を1990年比37%削減しましたが、政府の諮問機関は「現行政策だけでは2030年目標達成は困難」と警鐘を鳴らしており、Aramisプロジェクトはその打開策の一つとして期待されています。参照:https://www.aramis-ccs.com/news/aramis-takes-next-step-towards-investment-decision/