7月8日、米マイクロソフトはデータセンターの廃熱を利用して大気中の二酸化炭素(CO2)を回収する「DACinDC」の運用を開始した。AIの処理で生じる熱を使い、直接炭素回収(DAC)技術の効率を高めながら、AIのカーボンフットプリント削減も目指す。同社は炭素除去(CDR)由来のカーボンクレジットの最大手買い手でもあり、カーボンクレジット市場の拡大を支えている。マイクロソフトは、データセンターから出る余分な熱を使って大気中のCO2を回収する新システム「DACinDC」の運用を始めた。これにより、データセンターの排出削減とCDRを同時に進める。DACinDCは、AI処理で発生する廃熱を使うことで運転コストを抑えつつ、効率的にCO2を回収できるのが特徴だ。従来の廃熱利用は近くに熱を使う施設が必要だったが、データセンター内で直接回収できるため、場所の制約を受けずに活用できる。この技術ではAIを使って開発した新しい素材でCO2の吸着効率を高めており、マイクロソフトは2024年に試作段階まで進めていた。今後は廃熱だけでなく、データセンターの気流や水も活用し、さらなる脱炭素化を検討する。マイクロソフトは2024年に温室効果ガス(GHG)排出量が2020年比で30%増えたことを公表しており、特にデータセンター建設が排出増加の要因となっていた。DACinDCの運用は、この問題を解決するための取り組みの一環である。同社は2030年までにすべてのサプライヤーがカーボンフリー電力を使用する目標も掲げている。また、ノルウェーのHafslund Celsio(ハフスルンド・セルシオ)から100万トン以上のCDR由来のカーボンクレジットを購入するなど、世界最大級のクレジット購入企業となっている。廃熱を活用したDAC技術は、AIによる排出の削減と炭素除去を同時に実現でき、カーボンクレジット市場への貢献にもつながる。マイクロソフトは今後もこの技術の実証と商用化を進め、2026年中の次の進捗報告が注目される。参考:https://cdn-dynmedia-1.microsoft.com/is/content/microsoftcorp/microsoft/msc/documents/presentations/CSR/2025-Microsoft-Environmental-Sustainability-Report-PDF.pdf