米ルイジアナ州議会は4月30日、炭素回収・貯留(CCS)プロジェクトの地域住民による投票権を認める法案を委員会で否決した。産業界主導の脱炭素投資と、地域の安全・自治権をめぐる緊張が浮き彫りとなっている。否決されたのは、同州内の64の郡(パリッシュ)に対し、各自の判断でCCSプロジェクトの是非を問える権限を与える内容の「下院法案4号(HB4)」。委員会審議で6対10で否決され、地域住民による意思決定の道は閉ざされた。CCS技術はCO2を回収し、地下に封じ込めることで大気への排出を防ぐものだが、その安全性や効果には依然として懐疑的な見方が根強い。特に、ルイジアナ州および隣接するミシシッピ州では、過去にCO2輸送パイプラインの事故が発生し、住民が中毒症状を訴えたケースも報告されている。支持派は、州全体で統一的な規制枠組みを維持することが、エネルギー投資や雇用創出の観点から不可欠だと主張する。米環境保護庁(EPA)は2023年に同州へClass VI井戸の規制権限(プライマシー)を付与しており、これにより州が直接CCS許認可を管理している。他にも、土地収用権の制限や一時的な凍結措置を求めた法案など多数が審議されたが、最終的に通過したのは、地元自治体の意見を「考慮事項」として追加するにとどまる上院法案73号(SB73)のみだった。この条文には実効性が乏しいとの指摘もあり、地域住民の懸念を十分に反映するには不十分との声が上がっている。CCSを活用する4.2億ドル規模のブルーアンモニア製造拠点(CF Industries社)も州内で建設が予定されており、今後、脱炭素インフラと住民参加のバランスを巡る議論は一層過熱する可能性がある。参照:https://www.wwno.org/coastal-desk/2025-04-30/the-bills-that-failed-were-bad-for-louisiana-lawmakers-reject-most-carbon-capture-bills