英国と欧州連合(EU)は19日、温室効果ガス(GHG)の排出量取引制度(ETS)の相互接続と、英国に対するEU CBAMの免除で合意した。これにより英国のカーボンクレジット価格は6%上昇し、気候変動対策と経済成長の両立を図る新たな段階に入った。英国とEUは今後、両制度の技術的な整合性を高め、2026年にEUで開始されるEU CBAMの影響を回避する狙いだ。英国では2027年の独自CBAM導入が予定されているが、制度連携が実現すれば、英国内企業は追加的な輸出コストを免れる見通しとなる。このETS連携によって、短期的には英国の炭素価格がEU水準に近づき、国内産業の負担が増す可能性がある。一方で、中長期的には、市場の流動性や価格の安定性が高まり、2026年から2030年までに約770億円(5億ポンド)の貿易関連コストの削減が期待されている。英政府はまた、食品・農産物の通関手続きを簡素化する新たなSPS(衛生植物検疫)協定、12年にわたる漁業協定、若者の相互交流スキームなどもEUと合意した。これにより、ブレグジット後に低迷した英EU間の貿易が活性化し、英経済に2040年までに約1.6兆円(90億ポンド)の成長効果をもたらすと試算されている。英国スターマー首相は「今回の合意は、英国の雇用・生活費・国境管理にとって重要な前進」と述べ、欧州との新たな協調関係の構築に意欲を示した。英政府は今後、ETSの技術仕様、制度整合性、CBAM対応の具体化に向けた協議をEUと継続していく方針だ。参考:https://www.gov.uk/government/news/pm-secures-new-agreement-with-eu-to-benefit-british-people