2050年のカーボンニュートラル実現を見据え、ENEOSはエネルギー転換と循環型社会の実現を軸にした総合的な戦略を推進している。先日公表した、第4次中期経営計画(2025~2027年度)では、従来の石油・天然ガス事業に加え、SAF、バイオ燃料、合成燃料、CCSといった次世代エネルギーの開発・実装を本格化させている。SAFと合成燃料への大型投資、航空・海運の脱炭素化を見据えてENEOSは、2028年度以降の本格稼働を目指して和歌山製造所に年産40万KLのSAF製造体制を構築中であり、輸入販売による国内供給体制の整備も並行して進めている。また、英C2X社への出資を通じてバイオ・合成メタノール製造や海運向けのサプライチェーン構築にも注力しており、航空・海運の両分野で低炭素燃料の供給網を整えつつある。このほか、大阪・関西万博での合成燃料バスの実証走行を通じた社会的認知度の向上、国内初の合成燃料実証プラントでの実装なども取り組みの一環である。カーボンクレジット活用と森林吸収ENEOSは、自社排出のScope1,2削減に加え、サプライチェーン排出のScope3にも注力している。これには森林吸収によるカーボンクレジット創出(年30万トン)やCCSの社会実装が含まれ、国内外での吸収・削減量の「価値化」が進められている。また、BECCSやDACCSといった新しい手法にも触れており、将来的な選択肢の幅を確保している。加えて、カーボンクレジットの活用は「自社排出オフセット手段」としての戦略的位置づけがなされている。7,400億円の戦略投資、そのうち4割が低・脱炭素分野へENEOSは2025~2027年度の3年間で総額1.56兆円の設備投資を計画しており、そのうち戦略投資7,400億円のうち約60%(4,600億円)を低炭素(LNG・SAF等)および脱炭素(再エネ・CCS等)領域に配分している。この資金は、LNG開発(パプアLNG、BIGSTプロジェクトなど)、SAF製造拠点整備、洋上風力(八峰能代PJ)やVPP(仮想発電所)など多岐にわたる。また、グローバルでのM&A機会も視野に入れており、長期的な成長と環境適合の両立を図る構えだ。不確実性の中で描くカーボンニュートラルへの道筋ENEOSの脱炭素戦略は、不確実性の高い社会・政策環境の中で「柔軟なポートフォリオ転換」と「確かな収益基盤の確保」を両立させる野心的な取り組みである。SAFやカーボンクレジットは単なる環境対応手段ではなく、社会と事業の両面における「価値創出の核」として位置づけられている。2040年にはScope1,2の温室効果ガス排出量を最大73%削減する目標を掲げ、社会全体の排出削減貢献量としては1,800万トン-CO2e以上を見込んでいる。ENEOSは、変化する時代の中で「明日のあたり前」を築く存在として、日本のエネルギー産業の最前線を走っている。参照:https://www.hd.eneos.co.jp/about/plan.html