(画像出典:https://eco-markets.org.au/2025/05/22/unpacking-cassowary-credits-webinar/)Eco-Markets Australiaは5月22日、国連の「国際生物多様性の日」にあわせ、オーストラリア・クイーンズランド州北東部の湿潤熱帯雨林地域における自然再生を促進する、新たな生物多様性クレジット市場「Cassowary Credits」制度を開始した。この制度は、土地所有者が森林再生に取り組むことに対し、成果に基づく報酬を与える仕組みで、オーストラリア国内でカーボンクレジットと積み上げ(スタッキング)可能な初の生物多様性クレジットである。Cassowary Credits制度が適用される湿潤熱帯地域は、オーストラリアで最も古く、多様な生物が生息する熱帯雨林であり、世界で唯一、グレートバリアリーフと並ぶふたつの世界遺産が隣接する地域。同地域は、気候変動や外来種の侵入、森林伐採により生態系が深刻な脅威にさらされており、カソワリー(ヒクイドリ)の3種がすでに絶滅するなど、生物多様性の損失が進行している。新たに発行されるCassowary Creditsは、自然資源管理団体Terrain NRMが開発した仕組みで、対象となる再生プロジェクトは、定められた基準を満たし、森林の状態を実質的に改善する必要がある。最初に承認された「雨林再植林方法論」では、改変された土地に在来種を植え付け、森林の面積と質を回復する活動が推奨される。クレジットの発行は、モニタリングや報告、検証を経たうえで、成果が実証された場合にのみ実施される。Eco-Markets Australiaは、今回初めて政府認可のカーボンクレジット制度、ACCU(Australian Carbon Credit Unit Scheme)と同一の土地で生物多様性クレジットを積み上げ可能とする制度を導入。これは、土地所有者にとって収益源を多様化するメリットがあり、環境改善に向けた取り組みの加速が期待される。ただし、ダブルカウント(二重計上)を防ぐため、ACCUによる効果以上の生物多様性への追加貢献が必要となり、プロジェクト側には「反事実的差し引き」による算出が求められる。第一号プロジェクトは、カソワリー・コースト地域評議会によって登録され、ACCUとの積み上げ事例となる。また、制度ではアボリジニの地域事業者や供給者の参加を優先し、在来の知見を活かした苗の育成や管理が推進される。これにより、地域社会の経済的恩恵と文化的連携の両立が図られる。参考:https://eco-markets.org.au/2025/05/22/unpacking-cassowary-credits-webinar/