インド発の土壌炭素プロジェクト開発企業、Boomitraは11日、コスタリカ国内で新たに草地再生とカーボンファイナンスを組み合わせたプロジェクトを開始すると発表した。年間約169,950トンの二酸化炭素(CO2)を吸収する計画で、当初25万エーカーの牧草地に持続可能な放牧管理を導入し、今後は最大100万エーカーまで拡大する見通しだ。地元団体と連携し、持続可能な酪農へ転換同プロジェクトは「コスタリカ草地再生プロジェクト」と命名され、国内の酪農振興団体CORFOGAおよび環境NGO Plan21と連携。人工衛星とAIを活用した独自の土壌炭素MRV(測定・報告・検証)技術により、現地牧場主が取得するカーボンクレジットの精度を高めつつ、収益の大部分を農家に還元する。Boomitraのアーディス・ムールシー最高経営責任者(CEO)は「コスタリカの環境先進性と我々の技術の融合により、農業と気候の両面における実効性あるモデルを構築する」と述べた。酪農業が温室効果ガスの主因 再生型農業で反転狙う酪農はコスタリカの農業の主軸で、国土の35.5%を占め、地方の労働人口の12%を雇用する。一方で、放牧に依存した従来型の酪農は、土壌劣化を招き、生産性を下げる要因となってきた。環境省の推計によれば、酪農部門が同国の温室効果ガス排出量の23.6%を占めており、対策の急務とされている。Boomitraは輪作放牧やシルボパストラル(森林と放牧の融合)といった再生型農業の導入により、土壌の有機物含有量を高め、炭素隔離と生物多様性の向上、水保持力の強化を同時に実現するとしている。コスタリカ政府の脱炭素戦略と連動 資金面でも後押しプロジェクトは、2050年までのネットゼロ排出を掲げるコスタリカ政府の国家戦略とも整合。Boomitraの技術により、これまで技術・資金面の制約から再生型農業への移行が困難だった牧場主も、新たな収益源を得ながら転換可能となる。また、同社のMRV技術はVerraによる正式承認を得ており、手作業での土壌サンプリングを大幅に削減。これによりコストを圧縮し、農家への還元率を最大化している。グローバル展開の一環として 他国でも成果今回の事業は、Boomitraがインドやメキシコ、東アフリカなどで進めてきた再生型農業プロジェクトの延長線上にある。同社は2023年にアースショット賞を受賞し、現在は5大陸、500万エーカー超の土地で100,000人以上の農業従事者を支援。累計1,000万トンのCO2削減を達成したと発表している。ムールシーCEOは「この取り組みがグローバルに拡張可能なモデルとなることを期待している」と述べ、今後の展開に意欲を示した。同プロジェクトでは今後、初回のカーボンクレジット発行時期と対象農地の詳細が注目される。関係者によれば、年内にも最初のクレジット発行を目指すという。参考:https://boomitra.com/boomitra-expands-grassland-restoration-and-carbon-finance-projects-to-costa-rica/