気候変動や生物多様性の喪失といった地球規模の課題に対し、AIの活用が注目を集めています。2024年に設立されたBezos Earth Fundの「AI for Climate and Nature」グランドチャレンジは、環境問題の解決にAIを活用する取り組みを資金面から支援する新たな試みです。本コラムでは、この取り組みの背景、採択されたプロジェクトの特徴、そして今後の展望について紹介します。気候と自然のためのAIとは何かAIは、データの解析や予測モデルの構築に優れており、環境問題の解決においても有効なツールとされています。特に、自然環境のモニタリングやエネルギー消費の最適化、新たな気候技術の設計において、その活用が期待されています。Bezos Earth Fundは、2024年にこのAIの力を活かすべく、「AI for Climate and Nature」グランドチャレンジを開始しました。目的は、技術者と環境団体の連携を促進し、AIを通じた実践的かつ持続可能な解決策を育成することです。グランドチャレンジの狙いと構成本プログラムは、以下の4領域に重点を置いています。持続可能なタンパク質:植物性・代替タンパク質の研究開発支援生物多様性の保全:絶滅危惧種の保護や違法伐採の監視など電力網の最適化:再生可能エネルギーの分配や貯蔵技術の改良ワイルドカード枠:上記に分類されない独自性の高い取り組み2025年5月、第一段階として24のプロジェクトが選出され、各チームに5万ドルが支給されました。これらのプロジェクトは、大学や研究機関、NPOなど多様な主体により構成されており、AIと環境科学の融合を図るものです。先進的な取り組み事例CDR(炭素除去)の最適化:Carbon Sim(イェール大学)AIを活用したシミュレーションにより、土壌改良や海洋吸収といったさまざまなCO2除去技術の効果を検証するプロジェクトです。電気自動車と電力網の統合:EV Charging Optimization(コーネル大学)EVの充電をAIで最適化し、電力網への負荷を低減させながら、再エネの活用を促進する仕組みを構築しています。畜産由来の温室効果ガス削減:Livestock GPT(コーネル大学)生成AIを用いたチャットボットを通じて酪農家に飼料の最適化を助言し、メタン排出の削減を目指しています。食品廃棄と森林保護へのアプローチ他にも、食品廃棄物からタンパク質を生成するAI(リーズ大学)、違法伐採の早期発見を目指すドローンとAIの統合監視システム(BGCI-US)などが含まれ、幅広い分野での応用が見られます。今後の展望現在は「計画フェーズ」ですが、2025年後半には最大15プロジェクトが「実装フェーズ」に進み、2年間で各200万ドルの支援を受ける予定です。また、AIラボや大学との連携により、技術支援やトレーニングも強化される見込みです。まとめ本コラムは、Bezos Earth Fundによる「AI for Climate and Nature」グランドチャレンジの取り組みを紹介しました。AI技術の進展により、従来の手法では解決が難しかった環境課題にも新たな可能性が開かれています。今後の実装フェーズにおいて、どのような成果が生まれるかに注目が集まります。参考:https://www.bezosearthfund.org/news-and-insights/phase-i-grants-ai-grand-challenge-climate-nature