日本企業としても、Climeworksとパートナーシップ締結2025年4月24日、海運大手の株式会社商船三井(MOL)は、スイスのDAC技術を有するClimeworksと、1.34万トンのCO2を2030年までに大気中から除去する契約を締結したと発表しました。海運業界におけるClimeworksとの初契約であり、日本企業としても初めてのパートナーシップとなります。大気中からCO2を回収、除去する「DAC」で船舶業界の“排出困難分”をオフセット今回の協定では、MOLがClimeworksから高品質で長期的耐久性のあるCDRクレジットを取得します。対象となるのは、従来の技術では削減が困難な海運業界の排出量。これは、船舶の大型化や航続距離、燃料多様性の課題から、電動化などの一般的な脱炭素手法が適用しづらいためです。ClimeworksのDAC技術は、空気中のCO2を直接吸収・濃縮し、地中に貯留するという仕組み。除去されたCO2は半永久的に地層内に閉じ込められ、クレジットとして認証されます。MOL、2030年までに220万トンのCDR導入目標 Climeworksへの出資検討もMOLは、国際海事機関(IMO)の脱炭素目標に準拠し、2050年のネットゼロ達成を掲げています。その中間マイルストーンとして2030年までに220万トンのCO2を除去するという目標があり、今回のClimeworksとの提携はその実現に向けた重要ステップです。さらに今回の契約では、将来的なDACプラントへの出資に関するMOUも交わされており、MOLはClimeworksが計画する100万トン級DAC設備の建設に関与する可能性も視野に入れています。日本のETS制度にも対応する「耐久型CDR」導入の先進事例2024年、日本政府は「耐久型CDRクレジット(DACなど)」を国内排出量取引制度(J-ETS)で活用可能にする方針を発表しました。これにより、企業はDACクレジットを排出削減の手段として認められるようになることが想定されます。今回のMOLの事例は、この制度改正に呼応する形でスコープ1排出の一部を高精度CDRで補完する実証的モデルと捉えられており、他業界にも波及が期待されます。Climeworks CCO「脱炭素は“数値削減”でなく“戦略的投資”」ClimeworksのCCO、エイドリアン・ジーグリスト氏は「脱炭素はCSRレポート上の数字を減らすことではなく、未来のビジネスを創る戦略的選択です。MOLのように早期に行動する企業は、カーボンリムーバル市場を牽引する立場に立てる」とコメントしています。Climeworksは現在、世界規模でDAC施設の拡充を進めており、2030年代に年間100万トンのCO2除去能力の達成を目指すとしています。参照:https://climeworks.com/press-release/mitsui-osk-lines-first-partner-in-shipping-industry