排出量取引制度(ETS:Emissions Trading System)は、温室効果ガス(GHG)排出量を経済的な価値に変換し、企業や事業者に「排出コスト」を実感させる仕組みです。カーボンクレジット市場のコンプライアンスカーボンクレジット市場で最も普及しており、総量規制と市場取引を組み合わせて効率的に排出削減を促進します。排出量取引制度(ETS)の定義と基本概念排出量取引制度(ETS:Emissions Trading System)とは、政府や規制当局が対象となる産業・事業者に年間排出枠(Allowance)を割り当て、余剰または不足分を売買できる市場を構築する制度です。主な排出量取引制度(ETS)EU ETS:世界最大規模。2005年開始。電力・産業セクターを対象に、フェーズ4(2021–2030)で年率2.2%のキャップ引き下げを推進。カリフォルニア州ETS:2013年開始。州内の大規模排出源と燃料サプライヤーが対象。ケベック州ETSともリンク。東京都排出量取引制度:2010年開始。東京都内の特定規模事業者(ボイラー、焼却炉など)が対象。地方自治体初のモデル制度。韓国ETS:2015年開始。電力、製造業、航空をカバー。フェーズ3(2021–2025)で対象業種とキャップを拡大。RGGI(Regional Greenhouse Gas Initiative):米北東部9州が連携。発電セクターを対象に毎年排出枠(Allowance)を縮小。排出量取引制度(ETS)とカーボンクレジットの関係排出枠(Allowance)=コンプライアンスカーボンクレジット市場排出量取引制度(ETS)の排出枠(Allowance)は、法的義務に基づく排出量取引の単位として機能。国内外カーボンクレジットの併用一部の排出量取引制度(ETS)では、CDM・JI由来のCERやERUの活用(期限・量に制限あり)や、ボランタリーカーボンクレジット市場のボランタリーカーボンクレジットを活用するオプションも存在。まとめ排出量取引制度(ETS)は、総量規制による確実な排出管理と市場取引によるコスト最適化を両立する強力な制度です。排出枠(Allowance)やMRVといった主要用語を理解し、市場動向を把握することが、脱炭素経営の重要ステップとなります。