コンプライアンスカーボンクレジット市場は、企業や組織が法的規制に基づいて温室効果ガス(GHG)排出量の上限遵守を求められ、その枠内で排出権を売買する市場を指します。市場規模が大きく、価格シグナルを通じたGHG排出削減インセンティブを生み出すため、世界各地で導入・拡大が進んでいます。法的枠組みをベースにした取引市場コンプライアンスカーボンクレジット市場(Compliance Carbon Market,CCM)とは、政府や国際機関、または地域連合が定める「排出上限(cap)」に従い、参加主体が義務として排出枠(allowance)を取得・手放しすることで運営される市場のことです。コンプライアンスカーボンマーケット、コンプライアンス炭素市場などと言われることもあります。運営主体政府・地方自治体:EU ETS、カリフォルニア州キャップアンドトレード制度、東京都の排出量取引制度など国際機関:国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が管理する京都議定書に基づくカーボンクレジットなど地域連合:Western Climate Initiativeなど政府以外にも、パリ協定6条のメカニズムとして設立される、国際的な市場は、コンプライアンスカーボンクレジット市場のひとつの形態と位置づけられます。主要コンプライアンスカーボンクレジット市場の事例制度名運営主体対象セクター特徴EU ETS欧州連合(EU)電力・産業(製造、セメント、製鉄)世界最大級、段階的キャップ引き下げ(年2.2%)カリフォルニア州キャップアンドトレード制度カリフォルニア州政府/WCI連合発電所、製造業、燃料サプライヤーケベック州ETSとのリンク、価格フロア/シーリング導入東京都排出量取引制度東京都特定規模排出事業者(ボイラー、焼却炉等)国内初、地方自治体によるモデル制度韓国ETS韓国政府電力、製造業、航空2015年開始、フェーズ3(2021–2025)で対象拡大京都メカニズム国連気候変動枠組条約事務局(UNFCCC)AAU, CER, ERU, RMU(各メカニズム別)国際クレジット(AAU/Assigned Amount Unit等)を管理Regional Greenhouse Gas Initiative (RGGI)米北東部9州連合発電所米国初の州間ETS、毎年排出枠を緩やかに縮小中華人民共和国ETS中国国家発展改革委員会発電セクター(2021年開始)世界最大の排出量カバー、他セクターへの拡大計画中これらは「コンプライアンスカーボンクレジット市場」として位置付けられ、法的義務に裏打ちされた取引を行います。まとめコンプライアンスカーボンマーケットは、政府、国際機関、地域連合など多様な主体が法的義務に基づき運営する排出権取引市場です。これらの市場は、法令による総量規制と市場メカニズムを組み合わせることで、確実かつ効率的にGHG排出削減を促進しています。