企業の温室効果ガス排出量を評価・比較するうえで欠かせない指標が「CO2e(シーオーツーイー)」または「CO2eq(シーオーツーイーキュー)」です。自然界や人間活動から排出される温室効果ガス(GHG)は二酸化炭素(CO2)だけでなく、メタン(CH4)や一酸化二窒素(N2O)、フロン類など多岐にわたります。CO2eは、これらすべてのガスを「CO2換算」で統一的に評価できるように設計された単位なのです。目次CO2eの定義「異なる温室効果ガスをCO2に揃える仕組み」CO2e(CO2 equivalent)は、各GHGが大気中に与える温暖化効果を、CO2と同じスケールで比較できるようにしたものです。たとえば、メタン(CH4)は同じ重量ならCO2の約28倍、フロン類は数千倍もの温室効果を持つとされています。そこで「ガスごとの排出量(トン)× 地球温暖化係数(Global Warming Potential,GWP)」を計算し、その総和をCO2e、またはCO2eqとして表記します。計算イメージメタン1トン排出 → 1t CH4 × GWP28 = 28t CO2e一酸化二窒素0.5トン排出 → 0.5t N2O × GWP265 = 132.5t CO2eこうして異なるガスの影響を「CO2e」という共通単位に揃えることで、全体のGHG排出量を一目で把握できます。つまり、CO2eと表記することで、CO2以外のGHGについても考慮し、含まれているということを示せるということです。地球温暖化係数(GWP)の考え方地球温暖化係数は、特定のガスが「一定期間(通常100年)」にわたってどれだけ温室効果をもたらすかをCO2との相対比で示す数値です。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書では、以下のような代表的なGWPが公表されています。CO2:GWP = 1(基準)CH4(メタン):GWP = 28N2O(一酸化二窒素):GWP = 265HFC-23(フロン類の一種):GWP ≈ 12,400※算定期間に20年を用いる場合は数値がさらに高くなることがあります。CO2eを使う意義CO2eを用いる主なメリットは、異なるガス特性を持つ排出源を公平に比較できる点です。以下のようなシーンで活用されます。企業や国の温室効果ガス排出報告全体排出量をCO2eでまとめ、目標値(カーボンニュートラル達成など)と比較。サプライチェーン分析原材料調達/物流/製造/廃棄に至る各プロセスのGHGをCO2eで統一し、重点的な削減分野を特定。カーボンクレジットの取引カーボンオフセット量の計算にもCO2eを用いることで、「1クレジット=1t CO2e」の売買が可能に。こうしてCO2eは、社内外へのコミュニケーションやステークホルダーとの意思決定における共通言語として機能しています。メタン排出の計算例排出量データを収集例:乳牛飼育からのCH4排出量が年間2t。該当ガスのGWPを参照CH4のGWP(100年)=28。CO2eを算出2t CH4 × 28 = 56t CO2e。他ガスとの合算N2OやHFC類のCO2eを足し合わせて「総排出量CO2e」を求める。注意点と最新動向地球温暖化係数の算定期間20年/100年で数値が異なるため、報告目的に応じた地球温暖化係数の選定が必要です。新ガスの登場バイオジェン系ガスや代替フロンなど、新たなGHGへの地球温暖化係数設定も進行中。最新IPCC報告書を確認する必要があります。行動につなげる排出源の可視化:まずは自社のScope1,2,3をCO2eで算定し、削減ポテンシャルの高い領域を特定。目標設定:RE100やScience Based Targets initiative(SBTi)などのフレームワークに沿ったCO2e削減目標を策定。モニタリング:定期的にCO2e排出量を集計し、改善施策の効果を定量評価。オフセット検討:自社削減施策と併せて、信頼性の高いカーボンクレジット(1t CO2e単位)を活用し、早期のカーボンニュートラル達成を目指しましょう。まとめCO2e(CO2 equivalent)は、さまざまなGHGの影響をCO2単位に統一・比較するためのキーメトリクスです。地球温暖化係数に基づく明確な計算手順を踏むことで、自社の全体排出量を一つの数値で把握し、効果的な削減・オフセット戦略を立案できます。またCO2eと表記することで、CO2以外の温室効果ガスについてもしっかりと考慮しているというメッセージを対外的に示すことができます。最新の地球温暖化係数データやMRV体制を整えつつ、CO2eを活用した透明性の高い排出管理を進めることが、企業の持続可能性向上と社会的信頼の獲得につながります。