欧州連合(EU)は4月上旬、欧州排出権取引制度(EU ETS)に基づく最新データを公表し、対象セクターの温室効果ガス排出量が2005年比で50%減少したことを明らかにした。これは、2030年までに62%削減という目標達成に向けた大きな進展とされる。EU ETSは「キャップ・アンド・トレード」方式を採用し、企業ごとに排出枠を割り当てることで削減インセンティブを創出する制度である。排出枠を超過した企業は、市場で追加購入するか、罰金を支払う必要がある。価格は市場で変動し、排出削減の経済的価値を可視化している。今回の発表によると、2024年における対象セクター全体の排出量は前年比5%減少した。中でも、電力部門が再生可能エネルギーの導入拡大により12%の削減を達成し、全体の進展を牽引した。一方、産業部門は前年とほぼ同水準を維持し、航空部門では非国内便の制度再編を背景に15%の排出増が見られた。2024年に新たに加わった海運部門に関しては、比較データはまだ蓄積段階にある。この成果は、EUが制度改革と政治的変動の狭間にある中で達成された。2024年夏の欧州議会選挙では右派勢力の台頭が進み、CSRDおよびCSDDDの施行時期も延期された。一部では政策後退への懸念も高まっていたが、ETSの実績は経済的手法による気候変動対策の有効性を裏付けるものとなった。EU ETSは、米国の一部州(カリフォルニア州、ワシントン州など)が採用する制度と類似しており、世界各国の排出量取引制度設計にも影響を与えてきた。今回の実績により、EUは引き続き国際的な気候政策の先導役としての地位を維持することが期待される。引用:https://trellis.net/article/eus-carbon-pricing-scheme-lowers-emissions-to-50-of-2005-levels/