ゼロカーボンシティ長与町がカーボンオフセット都市ガス導入 西部ガスと連携、地域主導の脱炭素を加速

村山 大翔

村山 大翔

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長崎県長与町と西部ガス長崎は令和8年(2026年)2月26日、脱炭素社会の実現に向けた包括連携協定を締結した。

本協定の核心は、カーボンクレジットを活用した「カーボン・オフセット都市ガス」の供給と普及促進にあり、官民一体となって2050年の二酸化炭素(CO2)排出実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ長与」の実現を強力に推進する。

今回の提携に基づき、長与町は町役場などの公共施設において、燃焼時に発生するCO2をカーボンクレジットで相殺した都市ガスを順次導入する。また、町内の民間事業所や一般住宅に対しても同ガスの利用を促す方針だ。これは、地方自治体が地域エネルギー企業と組み、クレジット市場を介して実質的な排出削減を早期に達成しようとする、実効性の高い「移行期(トランジション)」の戦略といえる。

長与町は2021年3月にゼロカーボンシティ宣言を表明しており、自然環境と都市機能の調和を掲げてきた。一方、セイブガス(西部ガス)グループは「カーボンニュートラル2050」を掲げ、天然ガスへの燃料転換やガスの脱炭素化を3本の柱として推進している。本協定では、カーボン・オフセットガスの供給以外にも、石油燃料から天然ガスへの転換促進や、年間の一次エネルギー収支をゼロにする「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の認知向上にも取り組む。

現在、日本のJ-クレジット市場やボランタリークレジット市場は拡大傾向にあるが、地方自治体が直接的にクレジット由来のエネルギー商品を導入する動きは、地域社会全体の環境意識を底上げする効果が期待される。長与町と西部ガス長崎は、食品ロス削減に寄与する社会貢献型ショッピングサイト「ecoto(いいコト)」の活用なども含め、循環型社会の構築を多角的に進める計画である。

今後は、公共施設での導入実績をもとに、地域内でのクレジット循環や、より高度な炭素除去(CDR)技術の導入可能性を探ることが期待される。地方創生と脱炭素を両立させる本取り組みは、他自治体にとっての先行モデルとなるだろう。

地方自治体による「カーボン・オフセット都市ガス」の採用は、技術的なブレイクスルーを待たずに今すぐ実行できる現実的な解だ。今後、供給されるクレジットの「質(完全性)」に対する透明性が求められる中、西部ガスのような地域インフラ企業がクレジット調達の窓口となることで、中小企業や個人も間接的にカーボン市場へ参加しやすくなる。これは、地域経済を循環させながら脱炭素化を加速させる「グリーン・ローカル経済」の好例である。

参考:https://hd.saibugas.co.jp/news_release/detail/2025/pdf/nr067.pdf