三菱オートリースと十六リースは12月15日、車両リース契約にカーボンオフセットを組み込んだ新サービス「カーボンオフセット付オートリース」の提供を開始した。電気自動車(EV)への即時転換が困難な事業者に対し、既存のエンジン車を使用しながら脱炭素経営に対応できる「移行期の現実解」を提示する狙いだ。
走行距離から排出量を予測しオフセット
本サービスは、契約走行距離と車両燃費に基づき、リース期間中に排出されるCO2量を事前に予測算出する仕組みである。その排出量相当分のカーボンクレジットをリース会社側が調達・無効化することで、利用企業は実質的なCO2排出ゼロを実現できる。
特筆すべきは、カーボンオフセット費用が月々のリース料金に含まれる点だ。利用企業はカーボンクレジット購入のための別途予算申請や複雑な決済処理を行う必要がなく、通常の車両導入プロセスの中で脱炭素対応を完了できる。対象車種は軽自動車からトラックまで幅広く、カーボンオフセット比率も企業のニーズに合わせて調整可能とした。
J-クレジット活用で信頼性を担保
オフセットに用いるカーボンクレジットには、J-クレジットを採用する。オフセットの実務およびクレジット調達は、三菱オートリースの親会社である三菱HCキャピタルが担当し、手続き完了後には「無効化通知書」が発行される。これにより、利用企業は対外的な情報開示やサプライチェーンからの排出削減要求に対し、信頼性の高い証明を示すことが可能となる。
背景にある「EVシフトの障壁」
今回の協業の背景には、脱炭素社会への移行圧力と、現場の実情との乖離がある。大企業を中心にサプライチェーン全体の脱炭素化(Scope3削減)が求められる中、地方の中堅・中小企業にとっても対応は急務となっている。
しかし、充電インフラの不足、車両価格の高騰、あるいは航続距離の課題などから、すべての業務車両を直ちにEVへ転換することは容易ではない。三菱オートリースと十六リースは、こうした「EV化が困難な層」に対し、エンジン車を使い続けながら環境貢献できる選択肢を提供することで、地域企業の脱炭素化を底上げする。
「EV一本足打法」からの脱却と地域金融の役割
今回のニュースは一見するとニッチなサービスに見えるが、カーボンニュートラルに向けた「現実的な修正」を示唆する重要な動きである。
これまで脱炭素=EV化という図式が強調されてきたが、物流や地方の営業現場では、コストや運用面でEV導入が時期尚早なケースも多い。無理なEV化を強いるのではなく、信頼性の高いJ-クレジットを用いたオフセットを「移行期の正式な手段」として社会実装しようとする動きは、実利的な脱炭素アプローチとして評価できる。ただし、あくまでボランタリーな活動・開示となる点には留意したい。
また、地方銀行系である十六リースがこのスキームに参画した意義は大きい。地域経済の血流である地銀グループが、融資先やリース先である地元企業のCO2排出削減を支援するモデルケースとなり得るからだ。金融機能にカーボンクレジットを埋め込む手法は、今後、地方から脱炭素を加速させる鍵となるだろう。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000154106.html

