LIXILがJリーグ観戦のCO2を500トンオフセット 住宅太陽光由来の「J-クレジット」で社会還元を加速

村山 大翔

村山 大翔

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リクシル(LIXIL)とリクシル・テプコ・スマートパートナーズ(LTSP)は12月6日、プロサッカーJ1リーグの試合において、サポーターの移動に伴い発生した約500トンのCO2をカーボンオフセットした。この取り組みは、両社が運営する「建て得みらいクラブ」を通じて一般住宅から創出されたJ-クレジットを活用したもので、家庭由来の環境価値をスポーツという社会活動へ還元する先進的なモデルとなる。

オフセットの対象となったのは、カシマサッカースタジアムで開催された鹿島アントラーズ対横浜F・マリノス戦である。当日来場した37,079人のサポーターが移動時に排出した二酸化炭素(CO2)を、住宅用太陽光発電の自家消費分から生成されたクレジットで相殺した。ハーフタイムには両組織による「J-クレジット活用 カーボンオフセットセレモニー」も実施され、ファンに対して脱炭素への意識啓発を図った。

活用されたクレジットの源泉である「建て得みらいクラブ」は、2023年3月に始動した仕組みである。太陽光発電システムを実質0円で設置した住宅を対象に、家庭で自家消費された電力の環境価値をJ-クレジット制度に基づき集約・認証している。LIXILとLTSPは2025年よりこのクレジットの本格活用を開始しており、自社工場のネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)関連製品ラインでのオフセットに加え、社外への提供も拡大させている。

同社はスポーツを通じたカーボンニュートラルの実現を推進しており、年間で合計約1,500トンのCO2相殺を見込む。これには鹿島アントラーズのほか、プロバスケットボールBリーグのサンロッカーズ渋谷の試合における観客の移動や会場電力も含まれる。住宅の高性能化によって家庭部門の排出削減に寄与するだけでなく、創出した価値を「スポーツ」という感情を動かす場に投じることで、社会全体の変革を目指す方針だ。

LIXILは今後も「建て得みらいクラブ」を通じて住宅の脱炭素化を促進し、得られた環境価値を多様な社会課題の解決に充当する。住宅・エネルギー・スポーツが連携したこの循環型モデルは、2030年に向けた企業の環境戦略における重要な柱となる。次なる展開として、地域コミュニティや他のスポンサーシップ活動へのクレジット提供の拡大が注目される。

本件は、カーボンクレジットの「地産地消」ならぬ「家産社消」とも言える非常にユニークな事例だ。これまで家庭の太陽光発電による余剰電力は売電が主目的であったが、自家消費分の「環境価値」をクレジット化し、それを身近なスポーツイベントのオフセットに充てることで、個人の生活が社会の脱炭素に直結していることを可視化させている。

特に注目すべきは、企業がクレジットを単なる「排出量の埋め合わせ」として使うだけでなく、ファン・サポーターとのエンゲージメント構築のツールとして再定義している点だ。住宅メーカーがZEH普及という本業でクレジットを創出し、それをスポンサー活動という対外戦略に組み込む手法は、今後、国内のBtoC企業がカーボンクレジット戦略を策定する上でのスタンダードの一つになるだろう。

参考:https://newsroom.lixil.com/ja/2025122202