2件のMoU締結、カーボン諮問委員会の設置とイシク・クル植林プロジェクトの推進へ
キルギス共和国は、英を拠点とするカーボンプロジェクト開発企業バロー・カーボン(Valor Carbon)およびシンガポールのマーチャントバンクであるバリテラ(Valitera)と連携し、パリ協定6条のもとで同国のカーボンクレジット市場の構築を加速させる。
2026年3月2日、ロンドンで開催された「英・中央アジア外相会合2026」の場において、両者との間で2件の覚書(MoU)が正式に締結された。
第1のMoUは、バロー・カーボンとバリテラがキルギス当局と直接協力し、パリ協定6条に整合した高インテグリティなカーボンプロジェクトを推進するための枠組みを定めるものである。
第2のMoUは、バロー・カーボンとキルギス共和国との間で、より広範なカーボンクレジット市場インフラの整備に関するパートナーシップを構築する内容である。具体的には以下の取り組みが含まれる。
バロー・カーボンの共同創業者兼最高経営責任者であるロッコ・ヒューシュ(Rocco Huesch)氏は、パリ協定6条は気候変動対策に大規模な資金を動員し得る枠組みであるとした上で、LoAの取得や規制リスクの管理といった「構造的障壁」が依然として課題であると指摘した。同氏は、政府との早期の連携によりこれらの課題に対処する設計であると述べている。
バリテラのマネージングパートナーであるレネ・ベラスケス(Rene Velasquez)氏は、パリ協定6条に特化したアプローチが必要であり、現地でのプロジェクト開発と市場インフラの整備を組み合わせることで、ホスト国政府を支援し高インテグリティな供給を拡大すべきであると述べた。
キルギスは京都議定書時代のクリーン開発メカニズム(CDM)への参加実績を有するものの、カーボンクレジット市場の本格的な発展には至っていなかった。パリ協定6条2項の実施細則が整備されつつある中、中央アジア諸国は豊富な自然資源を活かしたカーボンクレジットの供給国として注目を集めている。
キルギス政府が民間セクターの専門性を初期段階から取り込む戦略をとったことは、これまで同地域で進捗を阻んできた規制面の不確実性やプロジェクト開発リスクを低減する試みとして意義がある。
日本企業にとって、中央アジアはパリ協定6条を通じたカーボンクレジット調達の新たなフロンティアとなり得る。
二国間クレジット制度(JCM)の対象国拡大やGX-ETSにおける国際カーボンクレジットの活用議論が進む中、キルギスのようなLoA発行体制の整備に積極的な国の動向は、日本企業のカーボンクレジット調達戦略の多様化を検討する上で注視すべきである。