土壌炭素除去の精度向上へ 米Grassroots Carbonがコロラド州立大学のコンソーシアムに参画

村山 大翔

村山 大翔

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米国を拠点とする土壌炭素除去プロジェクト開発大手のグラスルーツ・カーボン(Grassroots Carbon)は、コロラド州立大学(Colorado State University)の「生態系モデリング・データ・コンソーシアム(EMDC)」に産業パートナーとして加盟した。同社が保有する広大な放牧地での実測データをアカデミアの知見と融合させることで、土壌におけるカーボンクレジット創出の根拠となるモデリングの科学的信頼性を国家規模で強化する狙いがある。

今回の提携により、グラスルーツ・カーボンは、米国内22州にまたがる200万エーカー(約8,100平方キロメートル)以上の放牧地から得られた「深さ1メートル」に及ぶ土壌炭素の実測データを提供する。これら大規模なリアルワールド・データは、同大学の研究者らによって、炭素隔離の予測モデルや生態系の健全性、土地の生産性を評価するためのアルゴリズム改善に活用される。

テキサス州に本社を置くグラスルーツ・カーボンは、牧場主と直接提携して再生型放牧(リジェネラティブ・グレージング)の導入を支援し、科学的根拠に基づいた土壌炭素除去を推進してきた。同社はこれまでに、主要な企業バイヤー向けに190万トン以上の認証済みカーボンクレジットを引き渡した実績を持つ。

特筆すべきは、同社が2022年以降、適切な土地管理を行う牧場主に対して総額4,000万ドル(約60億円)を直接支払っている点である。この経済的インセンティブが、気候変動対策としての土壌管理を促進する原動力となっている。グラスルーツ・カーボンのブラッド・ティッパーCEO(最高経営責任者)は、「米国の放牧地は世界最大級の未利用な炭素解決策の一つである。EMDCとの提携により、高い誠実性を備えた土壌のカーボンクレジット創出を支える科学的基盤を強固にできる」と述べている。

土壌による炭素除去は、自然基盤の解決策(NbS)として期待される一方で、その測定や永続性の評価に高度な専門性が求められる分野である。EMDCのコンソーシアム・リードを務めるコリン・ウォルシュ博士は、「学術研究によるデータだけでなく、商業規模での展開データを取り入れることで、多様な環境下におけるモデルの検証と改良が可能になる」と、実務データの価値を強調した。

今後は、グラスルーツ・カーボンのデータサイエンス・チームがEMDCのワーキンググループに参加し、透明性の高い科学的アプローチを通じて、自然由来のカーボンクレジット市場における信頼性の標準化に寄与していく見通しである。米国内に広がる6億5,500万エーカーの稼働地が、次世代の強力な炭素吸収源として機能するためのマイルストーンとなることが期待される。

土壌炭素除去(Soil Carbon Removal)は、排出権取引の信頼性が問われる中で、最も「科学的根拠」が求められている領域だ。本提携のように、スタートアップが持つ膨大な実測データと大学の高度なモデリングを融合させる動きは、今後カーボンクレジットの単価(プレミアム)を高める重要な要素になる。日本企業にとっても、サプライチェーン排出量の削減において、こうした高精度な土壌プロジェクトへの投資や連携は、グリーンウォッシュ回避の有力な手段となるだろう。

参考:https://www.linkedin.com/posts/grassrootscarbon_us-grasslands-are-one-of-the-largest-untapped-activity-7431729573026979842-EiUt