DAC大手のClimeworksがカナダ アルバータ州に拠点開設 DAC商用化へ「極寒地テスト」を加速

村山 大翔

村山 大翔

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スイスの炭素除去(CDR)大手クライムワークス(Climeworks)は2026年2月23日、カナダ・アルバータ州カルガリーに新たな国内本社を設立したと発表した。

同州のエネルギー革新ハブ「ETC(Energy Transition Centre)」に入居し、2026年秋からは極寒環境下での大気直接回収(DAC)システムの性能実証を開始する。世界最大の商用DACプラント建設に向けた、北米市場における重要な布石となる。

炭素管理の先進地、アルバータ州を選択

クライムワークスがカルガリーを拠点に選んだ背景には、同州が長年蓄積してきたカーボンマネジメントの専門知識と、すでに整備されたインフラ、そして事業者に友好的な規制環境がある。同社はETCに拠点を置くことで、スタートアップや研究者、投資家、業界リーダーとの連携を深め、エネルギー革新のスピードを最大化させる構えだ。

カナダ国内における次のステップとして、現地ステークホルダーと協力し、寒冷地におけるDACシステムの試験サイト選定を進める。同社はこれまでに、アイスランドでの「Orca(オルカ)」や「Mammoth(マンモス)」といった大規模プラントの運営を通じて寒冷地での知見を蓄積してきた。今回のカナダ進出は、サウジアラビアでの乾燥地テストと並び、多様な気象条件下での展開実績を補完するものとなる。

2026年秋、モバイル試験施設が稼働

同社の計画によれば、2026年秋までにカルガリーでモバイル試験施設の稼働を開始し、リアルタイムのパフォーマンスデータを収集する。これは、将来的なメガトン規模の商用DACプラント建設に向けた技術的マイルストーンとなる。

今回のカナダ拠点はその成長戦略の一環だ。カナダ政府もDACの投資税額控除などを通じて業界を後押ししており、アルバータ州は世界で最もCDR技術の社会実装が進む地域の一つとして浮上している。

国際的な協力体制の構築

カナダのカントリーディレクター、コルム・フューリー氏は「アルバータ州のカーボンキャプチャー・エコシステムと支持的な政策枠組みは、我々がスケールアップする上で自然な選択だった」と述べている。また、インターナショナルCCSナレッジセンターやカーボン・リムーバル・カナダといった現地の非営利団体も、同社の参入がカナダ経済の新たな牽引車になると期待を寄せている。

クライムワークスのカナダ進出は、単なる拠点増設ではなく「気候適応型DAC」の標準化を狙った戦略的動向である。

カナダはCCS分野での政策的支援が手厚く、高品質なカーボンクレジットの供給源として日本企業にとっても重要な投資先・調達先となるだろう。特にエンジニアリングに強みを持つ日本の中小企業にとっては、こうした北米のCDRエコシステムへの技術供給という商機が今後拡大すると予測される。

カナダの事例は、規制を「負担」ではなく「産業育成の呼び水」として活用する先行モデルである。

日本でもGX経済移行債による支援が始まっているが、CDR特化の税額控除や、将来の炭素価格の明示といった「投資の予見性」ではまだ差がある。日本企業が国外の高品質なクレジットに依存するだけでなく、国内に同様のエコシステムを構築するためには、技術支援以上に「海外企業が流入したくなる制度設計」が急務となるだろう。

参考:https://climeworks.com/news/climeworks-establishes-canadian-headquarters-in-calgary