2025年11月、東北地方で開催された「TOHOKU DE&I FORUM2025」において、カーボンクレジットを活用した環境配慮型のイベント運営が実践された。
運営事務局は、登壇者やスタッフの移動、会場電力の使用などに伴い排出された二酸化炭素(CO2)のうち、2トンをカーボンオフセットにより無効化した。多様性と包摂(DE&I)をテーマに掲げる同フォーラムは、社会の多様性と地球環境の多様性を不可分なものと位置づけ、地方発のサステナブルなイベントモデルを提示した。
「DE&I×環境」の統合による価値創出
今回の取り組みの核心は、人的資本経営の要である「DE&I」と、環境課題である「カーボンニュートラル」を同一の文脈で整理した点にある。主催側は、すべての人が自分らしく活躍できる社会(DE&I)の基盤には、豊かな生態系と心地よい地域環境が不可欠であると定義。イベント運営における排出量を可視化し、削減困難な部分についてカーボンクレジットを用いて「相殺」することで、理念と行動の一貫性を図った。
排出量算定と無効化のプロセス
イベントにおけるカーボンニュートラル実現に向け、以下の3つのステップが踏まれた。
- 排出量の把握
出演者・スタッフの交通移動、機材運搬、会場内の使用電力から排出量を算出。 - 削減努力の明確化
運営過程で削減可能な要素を特定。 - オフセットの実施
残留した排出量に対し、カーボンクレジットを充当。
世界的なイベント産業のトレンドとして、ISO 20121(イベントのサステナビリティに関する国際規格)への準拠や、小規模な集会でもカーボンオフセットを導入する動きが加速している。今回の事例は、大規模な国際会議だけでなく、地方企業の自主的なフォーラムにおいても実効性のある脱炭素化が可能であることを証明した。
東北地方は豊かな森林資源を有しており、今後は地産地消型のJ-クレジットの活用など、カーボンクレジットを通じた地域経済の循環も期待される。今回の2トンという規模は、グローバルな排出量取引市場から見れば微細な数値ではあるが、地域コミュニティにおけるリテラシー向上と、中小企業による脱炭素経営への参入障壁を下げる重要な試金石となる。
今回の東北での事例は、単なる環境貢献にとどまらず、地方イベントが「環境」をブランド価値に変える戦略的ステップである。日本の中小企業にとって、数トン単位のスポット的なクレジット購入は、低コストでサステナビリティ対応を対外的にアピールできる有効な手段だ。今後は地域の森林組合等と連携し、地元のクレジットで地元のイベントを相殺する「地産地消型オフセット」が、自治体や地域金融機関を巻き込んだ新たな潮流になるだろう。
