米ライス大学のベイカー公共政策研究所から誕生した非営利カーボンレジストリ、BCarbon(ビーカーボン)は2026年2月12日、同社のレジストリ基盤を分散型台帳(DLT)のHedera(ヘデラ)ネットワークへ移行すると発表した。
この移行により、発行済みの200万トンを超えるカーボンクレジットに対し、高度な透明性と追跡可能性を保証するデジタル監査証跡(オーディットトレイル)が導入される。
BCarbonはこれまでPolygon(ポリゴン)ネットワーク上で運営されていたが、市場の成熟に伴い、より高いスケーラビリティと厳格な検証プロセスを求めてヘデラへの移行を決定した。本プロジェクトは、ヘデラ財団(Hedera Foundation)の支援を受けて実施される。
今回の移行の核心は、オープンソースの炭素市場インフラである「Hedera Guardian(ヘデラ・ガーディアン)」との統合だ。これにより、メタン排出削減(廃坑井の封鎖)、土壌炭素貯留、森林保全、ブルーカーボンといった多様なプロジェクトのモニタリング・報告・検証(MRV)プロセスが自動化される。
対象となる200万トン以上のカーボンクレジットは、トークン化されたデジタル資産として管理される。ヘデラの予測可能で低コストな手数料体系は、プロジェクト開発者や企業にとって、カーボンクレジット運用の透明性を高めつつコストを抑制するメリットをもたらす。
この取り組みは、国連開発計画(UNDP)がヘデラ上で展開する「デジタル公共財(DPG)国家カーボンレジストリ(NCR)」の構想とも整合しており、世界的な炭素市場のデジタルインフラ標準化に向けた大きな一歩となる。
ビーカーボンのCEO、エリック・アンヴァザクト(Eric Unverzagt)氏は「厳格な科学と最先端のデジタルインフラを融合させ、世界の炭素市場に透明性と効率性の高い新たな基準を提示する」と述べている。
業界では、ボランタリーカーボンクレジットの信頼性確保が急務となっている。
特に自然由来の吸収源やメタン削減プロジェクトは、データの算定根拠が複雑になりやすい。デジタル監査証跡を付与することで、二重計上の防止や、カーボンクレジットの「質の証明」が容易になる。
今後は、認証ワークフローの完全デジタル化により、地権者や小規模なプロジェクト開発者がより容易に、かつ低コストで高信頼なカーボンクレジットを供給できる環境が整う見通しだ。
カーボンクレジットの価値が「量」から「質と透明性」へとシフトする中、ビーカーボンのヘデラ移行は、デジタルMRVがもはやオプションではなく必須要件になったことを示唆している。
日本国内でJ-クレジット創出やCDR事業を検討している企業にとって、国際的なデジタル標準との互換性は、将来的なカーボンクレジットの輸出やサステナビリティ評価において決定的な差となるだろう。
