ボランタリー炭素市場の整合性委員会(ICVCM)は2026年2月5日、炭素クレジットの高品質ブランドである「コア・カーボン・原則(CCP)」ラベルの付与対象となる新たな評価結果を公表した。
今回承認されたのは、英アイソメトリック(Isometric)の再植林、ゴールド・スタンダード(Gold Standard)の稲作メタン削減、ACRの森林管理(IFM)に関わる3つの手法である。これにより、市場に流通するクレジットの信頼性を高め、高価格帯での取引を促進する環境がさらに整うこととなった。
英アイソメトリック(Isometric)が2025年10月に公開した「再植林プロトコル バージョン1.1」は、過去に森林だった土地を回復させる活動による二酸化炭素(CO2)除去量を算出する新しい手法である。ICVCMの評価フレームワークを完全に満たすと判断され、条件なしでのCCP承認となった。同手法には既に20社のプロジェクト開発者が登録しており、2030年までに年間400万トン以上のクレジット発行が見込まれている。
農業分野では、ゴールド・スタンダード(Gold Standard)の「稲作における水管理改善によるメタン排出削減手法 バージョン1.0」が、稲作特有の手法として初めて条件付きで承認された。世界のメタン排出量の約7%が水田に起因するとされる中、この採択はアジア圏の排出削減に大きな影響を与える。現在、インドやベトナムなどで約5万トンのクレジットが発行済みだが、これらは追加性の証明などの新条件を満たす必要がある。同組織は今後5年間で、最大320万トンのクレジット発行を予測している。
また、米ACR(ACR)が運用する「非連邦米有林における森林管理(IFM)バージョン2.0」も、動的なベースライン評価の適用などを条件に承認された。発行済みの1,330万トンのうち、約270万トンが即座にCCPラベルの対象となる見通しである。これらは既存の森林の吸収能力を維持・向上させる活動を評価するもので、北米市場における高品質クレジットの供給を支える柱となる。
ICVCMによる一連の審査では、これまで38の手法が承認された一方で、22の手法が基準に達せず却下されている。最新のデータによると、これまでに約1億500万トンのクレジットがCCPラベルの対象として承認された。このうち市場で取引可能な分は約5,200万トン、残りの5,300万トンは既に無効化(オフセットとして使用)またはキャンセルされている。ICVCMは今後も厳格な審査を継続し、2026年中にさらに多くの手法の評価を完了させる方針だ。
今回の発表は、単なる「対象手法の追加」に留まらない重要な意味を持つ。特に稲作メタン削減手法が初めてCCPに認められたことは、アジアに拠点を置く日本企業にとって大きな転換点となるだろう。これまでは「森林系」に偏重していた高品質クレジットの選択肢が、農業系や技術系の「CO2除去(CDR)」へと確実に広がり始めている。
特筆すべきは、ICVCMが22もの手法を「不合格」にしている点である。これは、これまでのボランタリー市場に蔓延していた「質の低いクレジット」が、明確に市場から排除され始めたことを示唆している。
今後は、CCPラベルの有無がクレジットの価格差(プレミアム)を決定づける基準となり、安価なだけのクレジットは資産価値を失うリスクがある。日本企業も、調達ポートフォリオを「CCP準拠」へシフトさせる時期に来ているといえる。
参考:https://icvcm.org/integrity-council-announces-assessment-decisions-on-reforestation-improved-forest-management-ifm-and-rice-cultivation-methodologies/
