ベゾス・アース・ファンド(Bezos Earth Fund)は2月4日、環境賞「アースショット賞(The Earthshot Prize)」のノミネート企業から選出された炭素除去(CDR)や二酸化炭素の回収・有効利用・貯留(CCUS)分野のスタートアップに対し、今後3年間で総額480万ドル(約7億2,000万円)を支援すると発表した。
この取り組みは、最終候補に残らなかったものの高い潜在能力を持つ初期段階のプロジェクトを対象とし、大気中のCO2削減と産業利用の社会実装を加速させる狙いがある。
今回の提携に基づき、基金は毎年16件、3年間で計48件のプロジェクトを支援する。各採択団体には10万ドル(約1,500万円)が分配され、事業規模の拡大や技術の高度化に充てられる。
初回の採択企業には、熱帯地域で風化促進(ERW)技術を展開するマティ・カーボン(Mati Carbon)やインプラネット(InPlanet)など、高付加価値な炭素除去クレジットの創出を目指す企業が含まれている。
マティ・カーボンは、熱帯の農地で岩石粉末を散布して天然の化学反応を促進し、大気中のCO2を安定した炭酸塩として固定化する。この手法は土壌の健康改善と長期的な炭素除去を両立する。インプラネットも同様の自然基盤型アプローチに注力しており、この分野では初となる独立検証済みの炭素除去クレジットを発行している。
利用(Utilization)分野では、エストニアのアップ・カタリスト(UP Catalyst)が注目される。同社は回収されたCO2を、蓄電池や産業用複合材料に使用されるグラファイトやカーボンナノチューブなどのカーボン素材へ変換する。これにより、炭素を長期製品に封じ込めると同時に、化石燃料由来の素材への依存を低減させる。
ベゾス・アース・ファンドのケリー・レヴィン(Dr. Kelly Levin)最高科学・データ・システム変革責任者は「革新的なアイデアが単なる可能性に留まらず、未来を再構築する変革的な解決策へと成長するよう支援する」と述べた。また、アースショット賞のジェイソン・クナウフ(Jason Knauf)最高経営責任者(CEO)は「受賞に至らなかった広範な候補群の中にも、投資価値の高い解決策が数多く存在する」と指摘した。
現在、炭素除去のエコシステムは米国での公的支援が注目される一方、民間のカーボン市場でも存在感を増している。英国政府が産業セクターへのCCUS導入支援枠組みを検討するなど、政策的な追い風も強まっている。今回採択された各社の技術が、今後数カ月でクレジットの供給量や品質にどのような影響を与えるかが次なる焦点となる。
今回のベゾス地球基金による支援は、賞レースの「選外」に光を当てた点で非常に合理的である。アースショット賞のような国際的な賞のノミネート段階で、すでに高度なデューデリジェンス(資産査定)を通過しており、初期段階の投資リスクが抑えられているからだ。
日本の事業者にとっての注目点は、マティ・カーボンやインプラネットが手掛ける「風化促進(ERW)」の台頭である。
森林由来のクレジットが信頼性の課題に直面する中、物理的に炭素を固定し、かつ農地改良という副次的メリットを持つERWは、高品質クレジットを求める日本企業の新たな調達先として有力な候補になるだろう。
