米国の環境サービス企業ゼフィロ・メタン(Zefiro Methane)は8月19日、オクラホマ州カスター郡での孤立油井の封鎖事業に基づき、二酸化炭素換算9万2,956トンの排出削減を証明するカーボンクレジットの発行を受けたと発表した。さらに、スイス系大手商社メルクリア・エナジー・アメリカ(Mercuria Energy America)に対し、事前契約に基づく初回納入も完了した。孤立井戸の修復事業がボランタリーカーボンクレジット市場を通じて直接資金化されたのは初めてであり、米国の炭素市場における新たな転機となる。
ゼフィロは、米国未封鎖油井の修復を通じて国際水準のカーボンクレジットを創出する企業で、カナダCboe、フランクフルト証券取引所、OTCQBに上場している。今回の「ACR959プロジェクト」は、米国の認証機関アメリカン・カーボン・レジストリ(ACR)が2023年に公表した孤立油井の温室効果ガス削減を算定する初の手法に基づき、第三者検証機関の認証を受けた。
6月21日に井戸の完全封鎖が確認され、7月29日に正式に検証が完了。ACRから発行されたクレジットがメルクリアに分割納入される枠組みで、第一弾の25%がすでに引き渡された。
メルクリア米国法人のマネージングディレクター、アダム・ラファエリ氏は「投資家が実証済みの削減活動に日常的にアクセスできなかった状況が長く続いた。我々の協業は、業界の在り方を変える力を持つ革新的プロジェクトを推進する姿勢の表れだ」と述べた。
ゼフィロの最高経営責任者キャサリン・フラックス氏は「ボランタリーカーボンクレジット市場において新たな基準が示された。孤立井戸の修復から直接クレジットを生成できることで、納税者資金に依存せずに井戸封鎖を進める道筋が開けた」と強調した。
また、最高商務責任者ティナ・レイネ氏は「メルクリアがこのクレジットを手法完成前から購入契約したことは極めて異例だ。今後は米国内の修復事業を通じて、需要の高い米国発の高品質クレジット供給を拡大できる」と述べた。
ゼフィロは2025年度第3四半期までに約2,440万ドル(約354億円)の収益を計上済みで、同年には西バージニア州環境保護局から80万ドル(約11億6,000万円)のメタン監視契約も獲得している。今回の孤立井戸クレジット事業は、既存の収益源に加わる「第三の柱」と位置づけられる。
孤立井戸問題は米国各州で環境・財政の双方に課題を突きつけており、日本でも老朽化インフラからの排出抑制に関心が高まっている。ボランタリーカーボンクレジット市場を通じた資金動員モデルは、国内のメタン対策や炭素除去(CDR)事業にも示唆を与える。