「生物多様性」可視化でJCM獲得に優位性 大阪ガスがフィリピン・ベトナムで水田メタン削減の実証に着手

村山 大翔

村山 大翔

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大阪ガスは2026年2月6日、環境DNA分析を用いるアドバンセンチネル(AdvanSentinel)と共同で、フィリピンおよびベトナムにおける水田メタン排出削減事業の調査を開始すると発表した。

経済産業省の「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」に採択された本事業は、二国間クレジット制度(JCM)における日本の提案力を高めるため、カーボンクレジット創出と生物多様性保全の両立を科学的に証明することを目指す。2026年3月から2027年3月にかけて技術実証と収益性の検証を行い、2027年度末までに両国で20件規模のプロジェクト実装を視野に入れる。

世界的な温室効果ガス削減の機運が高まる中、日本政府はJCMの活用により2030年までに累計1億トン、2040年までに累計2億トンのCO2削減貢献を目標に掲げている。特に東南アジア諸国では水田由来のメタン排出が課題となっており、間断かんがい(AWD)技術による排出削減が有力視されてきた。AWDは常時水を張る従来の手法に比べメタンを約30%削減できる一方で、水域の生態系へ影響を及ぼす懸念がホスト国側から指摘されていた。

本事業の核心は、環境DNA分析技術を用いて水田の生物多様性を定量的に評価し、カーボンクレジットに付加価値を与える点にある。

大阪ガスらは、グリーンカーボンと協力し、中干し期間の延長が生物に与える影響を可視化する。単なる炭素削減量だけでなくネイチャーポジティブ(自然再興)の側面をデータで裏付けることで、他国とのカーボンクレジット獲得競争における優位性を確保する戦略だ。

背景には、2025年2月に閣議決定された日本の次期温室効果ガス削減目標(NDC)がある。

2035年度に2013年度比60%削減、2040年度に73%削減という野心的な目標を達成するためには、質の高いJCMクレジットの早期発行が不可欠となっている。大阪ガスは、フィリピンやベトナムの大学・研究機関と連携し、2027年度末までに技術実証済みの工程を現地に実装する体制を構築する方針を固めた。

Daigasグループは、2025年2月発表の「エネルギートランジション2050」に基づき、脱炭素技術の開発を加速させている。同社は「JCMを通じてメタン削減を行うだけでなく、独自の貢献をホスト国に行うことが提案力の強化と早期の発行につながる」と、本事業の意義を強調した。

今回の大阪ガスの動きは、単なる排出削減事業の拡大ではなく、カーボンクレジットの「プレミアム化戦略」として非常に重要だ。現在、国際的なカーボンクレジット市場では、炭素の吸収・削減量に加えて「生物多様性への貢献」といったSDGs要素を付加したコベネフィット付きカーボンクレジットが、通常のカーボンクレジットよりも高値で取引される傾向にある。

特にJCMにおいては、ホスト国側が自国の自然環境保護を重視し始めているため、日本企業が「環境DNA」という科学的エビデンスを武器に交渉に臨むことは、今後の東南アジア市場における標準モデルになるだろう。

参考:https://www.osakagas.co.jp/company/press/pr2026/1797796_60967.html