スウェーデンが42億円のバイオCCS支援 CO2除去の産業競争力を強化

村山 大翔

村山 大翔

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スウェーデン・エネルギー庁(Swedish Energy Agency)は2026年3月、バイオ燃料の燃焼に伴う二酸化炭素(CO2)を回収・貯留する「バイオCCS」プロジェクトを対象とした、総額3億クローナ(約42億円)の新たな補助金公募を開始する。

政府の産業支援プログラム「インダストリクリベット(Industriklivet)」を通じて提供される本資金は、永続的な炭素除去(CDR)技術の規模拡大を目的としている。同国は2045年までのネットゼロ達成に向け、大気中からCO2を取り除くネガティブエミッションを気候戦略の柱に据える。

今回の公募は、バイオマス発電所やパルプ・製紙工場などから排出される生物起源のCO2を回収し、地中に永続的に貯留するBECCSの商用化を加速させる。対象となるプロジェクトは、初期段階の研究から実証プラント、フルスケールの投資事業まで多岐にわたる。スウェーデン政府は、排出削減が困難な「ハード・トゥ・アベート」セクターの残余排出を相殺するため、この技術を不可欠な手段と位置づけている。

スウェーデン・エネルギー庁の調査・イノベーション・事業開発部門の副局長であるクララ・ヘルスタッド(Klara Helstad)氏は「負の排出に貢献できる革新的なプロジェクトを支援し、スウェーデンの産業競争力を強化する必要性が高まっている」と述べた。さらに同氏は、この新たな公募が気候目標の達成に向けた重要なステップであることを強調した。

今回の支援対象は永続的な地中貯留を伴うものに限定されており、二酸化炭素の有効利用(CCU)やバイオ炭(バイオチャー)の生産プロジェクトは除外される。予算の制約により、2026年内は「インダストリクリベット」における他の産業プロセス排出削減分野での追加公募は予定されていない。

スウェーデンは、バイオCCSの社会実装を支援するために「逆オークション(リバース・オークション)」制度を導入するなど、多層的な支援体制を構築している。直近では、ストックホルム・エクセリ(Stockholm Exergi)が進める大規模なBECCSプロジェクトに対し、18億ドル(約2,700億円)以上の運用・投資支援を決定した。同国は欧州連合(EU)の復興・回復ファシリティ(RRF)の枠組みも活用し、クリーン産業技術のスケールアップを継続している。

スウェーデン・エネルギー庁は今後、国内のCCS調整センターとしての役割も担い、バイオCCSのインフラ整備と国際的な連携を主導する。3月に予定されている公募開始により、世界的に供給が不足している「永続的な炭素除去」の新たな供給源として、プロジェクト開発者からの強い関心を集めると予想される。

スウェーデンの動きは、カーボンクレジット市場において今後「排出回避」から「炭素除去(CDR)」へと需要がシフトすることを見越した、極めて戦略的な投資である。

特に、バイオCCSを「産業競争力の強化」と結びつけている点に注目したい。

日本でもCCS事業法の整備が進んでいるが、スウェーデンのように「直接的な補助金(インダストリクリベット)」と「長期的な収益性を保証する逆オークション」を組み合わせたハイブリッド型の支援策は、先行投資リスクの高いCDR事業を国内に定着させるための強力なモデルケースとなるだろう。

参考:https://www.energimyndigheten.se/nyhetsarkiv/2026/industriklivet-oppnar-ny-utlysning-for-negativa-utslapp/