EUが気候外交を「取引型」へ大転換 COP30での孤立受け通商・金融を武器に活用

村山 大翔

村山 大翔

「EUが気候外交を「取引型」へ大転換 COP30での孤立受け通商・金融を武器に活用」のアイキャッチ画像

欧州連合(EU)は2026年2月4日、ブラジルで開催されたCOP30での交渉難航を受け気候外交戦略を抜本的に見直す方針を固めた

ロイター通信が報じた内部文書によると、EUは従来の理想掲示型の対話から通商協定や開発金融を交渉材料として直接的に利用する「取引型アプローチ」へと舵を切る。世界的な排出削減を加速させるため、気候変動対策が不十分な国家に対しては、新たな経済協力や有利な貿易条件の提示を拒否する姿勢を鮮明にしている。

COP30において、EUは主要排出国や新興国からの支持を得られず、「ほぼ孤立した状態」に陥ったことが今回の戦略転換の背景にある。EU当局は、従来の「善意に基づく協調」だけでは、パリ協定の目標達成に不可欠な炭素除去(CDR)技術の普及や、透明性の高いカーボンクレジット市場の構築を主導できないと判断した。今後は、EUとの経済的連携を望むパートナー国に対し、厳格な排出削減目標の策定や、高品質なカーボンクレジット創出メカニズムの導入などを「取引の条件」として突きつける。

具体的な手段として、EUは貿易協定の締結条件に気候変動条項をより強力に組み込むほか、欧州投資銀行(EIB )などによる開発金融を、排出削減の成果に直接ひも付ける。これにより、相手国に対して安価な資金提供を行う代わりに、炭素回収・貯留(CCS)プロジェクトの推進や、国際的な炭素市場への適応を迫る狙いがある。

ロイターが報じた文書内では、EUが将来的に「気候変動対策が弱いとみなされる合意」を断固として拒絶する方針が示されている。これは、炭素国境調整措置(CBAM)の適用拡大や、域内カーボンクレジット市場へのアクセス制限とも連動する動きであり、国際的な気候変動対策の主導権を「経済力」によって奪還する狙いが透けて見える。

EUは今後数カ月以内にこの新戦略の詳細を公表し、次期国連気候変動会議に向けた交渉の柱とする予定である。

今回のEUの「取引型外交」へのシフトは、もはや気候変動対策が環境保護の枠組みを超え、完全な「経済戦争」のフェーズに突入したことを意味している。

特に注目すべきは、これまで「途上国への支援」という文脈で語られてきた開発金融が、事実上の「CDR技術や高品質クレジットの強制ツール」へと変貌する点だ。

日本企業にとっては、単なる排出削減の努力だけでなく、EUが求める厳格な炭素除去基準や透明性を備えたクレジットを早期に確保・供給できる体制を整えなければ、欧州市場へのアクセスや、欧州金融機関を介した資金調達において「気候不適格」の烙印を押されるリスクが高まるだろう。

欧州が経済力で強引に市場のルールを書き換えようとする中、日本独自のカーボンクレジット基準が国際的にどう評価されるか、今春の政策動向が極めて重要になる。

参考:https://www.reuters.com/sustainability/cop/eu-rethinks-climate-diplomacy-after-bruising-cop30-summit-document-shows-2026-02-04/