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カーボンクレジットを資産として計上 英Kitaが法律事務所の長期購入契約を保険で保護 | カーボンクレジット.jp

カーボンクレジットを資産として計上 英Kitaが法律事務所の長期購入契約を保険で保護

村山 大翔

村山 大翔

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英カーボンクレジット専門保険会社のキタ(Kita)は2026年1月31日、大手法律事務所クライド・アンド・コー(Clyde & Co)と助言会社ネイチャー・ブローキング(Nature Broking)の間で締結された炭素除去(CDR)クレジットの長期購入契約に対し、保険を適用したと発表した。

本契約は、購入したクレジットを「費用」ではなく「貸借対照表(B/S)上の資産」として扱う革新的な会計手法を採用しており、保険がその資産価値を担保する仕組みだ。2030年代に向けたクレジット供給不足と価格高騰を見据え、企業の気候変動対策を財務戦略へと昇華させる先行事例となる。

今回の提携により、キタはクライドが先行予約したCDRプロジェクトがクレジットの創出に失敗した場合のバックストップ(最終的な保証)を提供する。キタの最高経営責任者(CEO)であるナタリア・ドーフマン氏は「保険は、調達が長期契約へとシフトする中で、リスクとリターンのバランスを劇的に変えることができる」と述べ、保険の存在が長期契約の銀行融資適格性(バンカビリティ)を高める重要性を指摘した。

クライドは、SBTiの指針に沿い、2038年以降の残余排出量をオフセットするためのCDRクレジットを、2025年時点の価格で固定した。これにより、将来的な供給制約による価格高騰リスクを回避するヘッジ戦略を構築している。

本件の最も画期的な点は、専門アドバイザーのリシンキング・キャピタル(Rethinking Capital)の支援を受け、国際会計基準(IAS)の第37号および第38号を適用したことにある。従来、カーボンクレジットの購入は損益計算書(P/L)上の費用として計上され、企業の利益を圧迫する要因となっていた。しかし、本スキームではこれを「将来の負債に対するヘッジ資産」と再定義し、B/Sに計上することを可能にした。

ネイチャー・ブローキング(Nature Broking)のルーク・ボールドウィンCEOは「サステナビリティ部門は今後、CFOに対して利益を削る『費用要請』ではなく、資産価値を創造する『投資提案』ができるようになる」と強調した。クレジット価格が上昇すれば、B/S上の資産価値も評価替えによって上昇する可能性がある。

炭素市場では、カーボンクレジットの質に対する懸念が残る一方で、質の高いプロジェクトへの投資は加速している。直近では、資源商社トラフィギュラ(Trafigura)が支援する連合が、アフリカの再生プロジェクトに10億ドル(約1,500億円)以上を投じ、5,000万トン以上の温室効果ガス除去を目指す計画を表明した。

今回の「資産計上+保険」というモデルは、CDRを単なるレピュテーション対策から、戦略的な資本配分へと変貌させる。クライドのような大手法律事務所が自らこのスキームを実践したことは、今後、同社のクライアント企業が同様の財務構造を採用する際の大規模な呼び水となることが予想される。

今後は、2026年中に議論が進むSBTiの基準改定において、CDRクレジットの活用範囲がどこまで明確化されるかが、この「資産化モデル」の普及を左右する次の焦点となるだろう。

本ニュースの本質は、カーボンクレジットが「環境寄付」の域を脱し、完全に「金融商品」としての市民権を得たことにあります。特に注目すべきは、国際会計基準(IAS)を逆手に取った資産化のロジックです。

これまで日本の多くの企業にとって、カーボンクレジット購入は「利益を削るコスト」であり、株主への説明が難しい領域でした。しかし、これを「将来の炭素税や排出枠高騰に対するヘッジ資産」としてB/Sに乗せることができれば、財務健全性を維持したまま大規模な脱炭素投資が可能になります。

日本企業においても、法務・財務・環境部門が一体となったカーボンファイナンスの視点が不可欠になるでしょう。

参考:https://www.kita.earth/blog/kita-insures-landmark-deal-with-clyde-and-naturebroking