二酸化炭素の回収・貯留(CCS)事業を展開するノーザンライツ(Northern Lights JV)は、液化CO2(LCO2)運搬船4隻の長期用船契約を締結した。
今回の発注は、2028年までに年間500万トン以上の貯留能力を目指す「フェーズ2」計画の一環であり、川崎汽船や商船三井などの海運大手がパートナーとして参画する。2025年8月に海底への圧入を開始した世界初の商用CCSサービスは、大型船の導入により欧州全域をカバーする広域輸送体制の構築を加速させる。
今回の契約では、川崎汽船とマレーシアのMISCベルハド(MISC Berhad)によるコンソーシアムが2隻、商船三井が2隻の運搬船を引き受ける。新造船の貨物タンク容量は12,000立方メートルで、2024年後半から順次導入されている既存船の7,500立方メートルから大幅に大型化される。建造は中国の大連船舶重工集団海洋工程(Dalian Shipbuilding Offshore Co. Ltd)と韓国のHD現代重工業(HD Hyundai Heavy Industries Co. Ltd)が担当し、2028年後半から2029年前半にかけて竣工する予定だ。
ノーザンライツのマネージングディレクターであるティム・ヘイン氏は「船団の拡大により、顧客へのコミットメントを果たすとともに、運航の最適化と柔軟性の向上が可能になる。これは市場の成熟と参画者の増加を象徴している。私たちは世界初の専用CO2船団を構築する先駆者であり、この経験はCCS業界に長きにわたり利益をもたらすだろう」と述べた。
この輸送能力の強化は、欧州各国の産業部門から排出されるCO2の受け入れ拡大に対応するものだ。同社はこれまでにスウェーデンのストックホルム・エクセルギ(Stockholm Exergi)やオランダのヤラ(Yara)、デンマークのオーステッド(Ørsted)といった企業と商業契約を締結している。ノルウェー西岸の受け入れターミナルに集められた液化CO2は、パイプラインを通じて海底下2,600メートルの地層へ永久貯留される。
本プロジェクトはノルウェー政府によるCCS推進策ロングシップ(Longship)の中核を担っており、直近ではオフショアのオーロラ(Aurora)貯留層において、永久貯留を証明する初の証明書を発行した。これにより、回収から輸送、注入に至るサプライチェーンの信頼性が改めて確認された形だ。拡大計画に向けた最終投資決定は、欧州連合(EU)の助成金やパートナー企業の出資を背景に2025年に下されており、2028年までに現在の年間150万トンから500万トン以上へと処理能力を引き上げる予定である。
今回の発表は、CCSがもはや研究段階ではなく、海運や重工業を巻き込んだ巨大な物流ビジネスへと変貌したことを示している。特筆すべきは、日本の海運大手がこの欧州の最先端インフラを支える「動脈」として深く組み込まれている点だ。12,000立方メートル級への大型化は、単位あたりの輸送コスト削減、ひいてはカーボンクレジットとしての価格競争力に直結する。
今後、日本企業にとっては、LCO2運搬船の建造や運航ノウハウの蓄積が大きな商機となるだろう。また、ノーザンライツが「貯留証明書」の発行を開始したことは、炭素除去(CDR)クレジットの透明性を高める重要な一歩だ。
これにより、今後2〜3年以内に、CCS由来の高品質なカーボンクレジットが国際市場でより高い流動性を持つことが予想される。
参考:https://norlights.com/news/northern-lights-expands-the-fleet-with-four-more-co%e2%82%82-ships/


