ノルウェーがザンビアから350万トンのCO2排出枠を購入へ パリ協定第6条に基づく新プログラムが始動

村山 大翔

村山 大翔

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ノルウェー政府とザンビア政府は28日、パリ協定第6条に基づく「排出削減量購入契約(MOPA)」を締結した

グローバル・グリーン成長研究所(GGGI)が仲介した本合意により、ザンビアの再生可能エネルギープロジェクトから生じる検証済みの排出削減量を、ノルウェーが国際的なカーボンクレジットITMOs(国際的に移転される緩和成果)として買い取る。本事業は、深刻な干ばつに直面するザンビアの電力安定化と、世界的な炭素市場の活性化を同時に目指す画期的な取り組みとなる。

本契約に基づき、新たに「炭素フィードイン・プレミアム(CFIP:Carbon Feed-In Premium)」プログラムが開始される。これは、ザンビアの国内送電網に供給されたクリーンな電力による排出削減量に対し、実績に応じた報酬を支払う仕組みである。

ノルウェーは今後10年間で、最大350万トンの二酸化炭素(CO2)換算の排出削減枠を購入する権利を得る。総削減量は最大で700万トンに達する可能性があり、初期段階で300メガワット(MW)規模の太陽光発電および蓄電池施設の整備を後押しする。

ザンビアは伝統的に電力供給の約82%を水力発電に依存してきたが、近年は長期化する干ばつにより発電能力が激減し、石炭やディーゼル発電への依存度が高まっていた。本プログラムは、カーボンクレジットによる追加収益をプロジェクト開発者に提供することで、投資リスクを軽減し、太陽光など多様な再生可能エネルギーへの民間投資を呼び込むことを目的としている。

ザンビアのマイク・ムポシャ(Mike Mposha)緑の経済・環境相は「本合意は、クリーンで信頼性の高い電力への投資を呼び込む強力な後押しとなる。資金を検証済みの結果に結びつけることで、エネルギー安全保障の強化と気候変動目標の達成を加速させることができる」と述べた。

また、ノルウェーのアンドレアス・ビェラン・エリクセン(Andreas Bjelland Eriksen)気候環境相は「ザンビアとの協力により、測定可能な排出削減を推進し、民間部門のグリーンファイナンスを深化させることができる。パリ協定第6条のルールに基づき、高い透明性と完全性を維持しながら移行を加速させる」と指摘した。

今回のスキームは、ドイツ政府の国際気候イニシアチブ(IKI:International Climate Initiative)が支援する「パリ協定第6条協力準備支援プログラム(SPAR6C:Supporting Preparedness for Article 6 Cooperation)」などの複数年にわたる準備を経て実現した。

今後、ザンビア政府、ノルウェー政府、およびGGGIは、実務的な実施体制を最終決定し、早期のクレジット創出とザンビア国内へのリザルトベース・ファイナンス(実績連動型資金)の還流を開始する予定である。

今回のノルウェーとザンビアの合意は、パリ協定第6条(市場メカニズム)がいよいよ「理論から実践」のフェーズへ移行したことを象徴しています。

特に注目すべきは、単なるクレジットの売買にとどまらず、「CFIP(炭素フィードイン・プレミアム)」という、再エネの固定価格買取制度(FIT)に炭素価値を上乗せするような洗練されたインセンティブ設計が導入された点だ。

これは、JCM(二国間クレジット制度)を推進する日本にとっても、途上国の電力政策と炭素市場をどう融合させるかという観点で非常に示唆に富むモデルケースと言える。

また、水力不足を太陽光で補うという「適応」の側面を「緩和(排出削減)」の資金で解決する構図は、今後アフリカ諸国での気候資金流入の主要なテンプレートになる可能性が高い。

参考:https://gggi.org/zambia-and-norway-sign-purchase-agreement-on-emission-reductions/