廃炭鉱へのバイオマス貯蔵でCDR加速 Wild Assetsがカーボンクレジット先行購入

村山 大翔

村山 大翔

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炭素除去(CDR)に特化したグローバル資産運用会社のワイルド・アセッツ(Wild Assets)は1月27日、自然由来の気候変動対策を手掛けるリワインド(Rewind)との間で、カーボンクレジットのオフテイク(先行購入)契約を締結したと発表した。

本契約により、ワイルド・アセッツはジョージアで展開される世界初の商用「深層鉱山貯蔵(DMS)」プロジェクトから生成される将来のカーボンクレジットを確保する。同プロジェクトは、2027年までに年間50,000トンの二酸化炭素(CO2)換算の貯蔵能力に達する見込みだ。

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今回の提携の軸となる深層鉱山貯蔵(DMS)は、廃坑となった炭鉱の空間に木質バイオマスの残渣を注入し、炭素を封じ込める革新的な手法である。注入されたバイオマスは安定化・密封された後、継続的なモニタリングが行われる。天然の無酸素環境を活用することでバイオマスの分解を防ぎ、数千年にわたってCO2を隔離することが可能となる

本プロジェクトによるカーボンクレジットは、現在パブリックコンサルテーション段階にある、独立系認証機関アイソメトリック(Isometric)の「地下鉱山におけるバイオマス貯蔵」モジュールに基づいて発行される予定だ。リワインドは、DMSに特化した開発事業者として同モジュールの策定にも寄与している。

リワインドのラム・アマル(Ram Amar)最高経営責任者(CEO)は「今回のオフテイク契約は、その規模だけでなく、炭素除去のあり方に対して深い洞察と明確な価値観を持つワイルド・アセッツのチームから得られたという点で、我々にとって大きな意味を持つ」と述べた。

ワイルド・アセッツは声明の中で「リワインドのチームは、卓越した技術的厳密さと実行能力、そして品質への深いコミットメントを示している。バイオマス貯蔵の手法が広がる中で、同社の原料調達の整合性や厳格な測定・報告・検証(MRV)体制を高く評価した」と指摘した。

リワインドはジョージア国でのDMSプロジェクトのほか、ルーマニアやイスラエルの地中海で「海洋無酸素炭素貯蔵(MACS)」の取り組みも進めている。同社は2030年までに、世界各地の鉱山や海洋盆地を活用し、年間100万トンのCO2を除去するネットワークの構築を目指している。

アイソメトリックによる規格策定の進捗と、ジョージア国での実証データの蓄積が、今後のクレジット発行時期を左右する焦点となる。

今回のニュースは、従来の森林吸収型クレジットに対する信頼性が揺らぐ中で、「エンジニアリング」と「自然のプロセス」を組み合わせた新しいCDR手法への投資加速を象徴している。廃炭鉱という既存のインフラを活用するDMS(深層鉱山貯蔵)は、DACに比べて低コストでありながら、森林よりも長期かつ確実な貯蔵が期待できる点が強みだ。

特に注目すべきは、ワイルド・アセッツが「MRV(測定・報告・検証)の厳格さ」を投資判断の最優先事項に挙げている点である。現在、アイソメトリックのような新興の認証機関が、より科学的で透明性の高いプロトコルを整備しており、日本企業が将来的に高品質なクレジットを調達する際にも、こうした「どの規格に基づいているか」が重要な選別基準になるだろう。

参考:https://www.wild-assets.com/blog/wild-assets-and-rewind-enter-an-offtake-agreement