ExxonMobilとCF IndustriesがCCS商業運用を開始 「低炭素肥料」でバイオ燃料の脱炭素化を加速

村山 大翔

村山 大翔

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エネルギー大手のエクソンモービル(ExxonMobil)は2026年1月26日、米ルイジアナ州において肥料製造大手CFインダストリーズ(CF Industries Holdings)と提携した炭素回収・貯留(CCS)プロジェクトの商業運用を開始したと発表した。

本事業は、CFインダストリーズのドナルドソンビル工場から排出される二酸化炭素(CO2)を年間最大200万トン回収し、地下に永久貯留するものだ。回収されたCO2を削減分としてカウントする「低炭素アンモニア」の製造を軸に、農業からバイオ燃料に至るサプライチェーン全体の脱炭素化を目指す。

今回の商業運用開始は、エクソンモービルにとって北米湾岸地域における低炭素インフラ戦略の重要な節目となる。

同社は地下貯留に関する専門知識と既存のパイプライン網を活用し、CO2の輸送・貯留サービスの提供元としての地位を固める。同社はすでにアトモス・クリア(AtmosClear)やレイクチャールズ・メタノール(Lake Charles Methanol II)とも計200万トンのCO2処理契約を締結しており、2026年中にさらに3件のCCSプロジェクトの稼働を予定している。

本プロジェクトの核心は、CCSによって製造された「低炭素肥料」の市場投入にある。

CFインダストリーズは、世界最大のバイオ燃料生産者であるポエット(POET)や、農業協同組合のウィンフィールド・ユナイテッド(WinField United)と共同でパイロットプログラムを開始した。低炭素アンモニアから作られた肥料をアイオワ州やミネソタ州などのトウモロコシ農家に供給し、そのトウモロコシを原料に低炭素エタノールを製造する。ポエットは約500万から600万ガロン(約1,890万から2,270万リットル)の低炭素エタノール生産を見込んでいる。

CFインダストリーズの最高商業責任者(CCO)であるバート・フロスト氏は、「低炭素強度で製造された肥料は、バイオエタノールの原料を脱炭素化するための定量化および認証可能な手法を提供する」と述べ、肥料から燃料に至るバリューチェーンの構築に自信を示した。この取り組みにより、エタノール製造に伴う炭素集約度(CIスコア)を大幅に引き下げることが可能となり、航空燃料(SAF)市場への展開も視野に入る

エクソンモービルはCCSの適用範囲を鉄鋼、アンモニア、天然ガス処理に加え、新たにデータセンター分野へも拡大する方針だ。同社は、CCSを組み合わせた天然ガス発電による「低炭素データセンター」の建設を計画しており、2026年末までに最終投資決定(FID)を行う予定である。急増するAI需要に伴う電力消費の脱炭素化ソリューションとして、CCSインフラを商用規模でスケールアップさせる戦略を鮮明にしている。

北米では、シェブロン(Chevron)やオクシデンタル・ペトロリアム(Occidental Petroleum)などの競合他社も大規模なCCSプロジェクトを推進している。エクソンモービルは、2026年中にリンデ(Linde)やニューコア(Nucor)との提携事業も稼働させる計画であり、ルイジアナ州およびテキサス州を拠点とする広大なCCSハブの構築を急ぐ。

今回のエクソンによるCCS商業運用の開始は、単なる「工場の排出削減」に留まらない極めて重要な転換点です。

注目すべきは、CCSが「肥料」を通じて農業、さらには「バイオ燃料」の炭素集約度(CIスコア)を直接引き下げる武器として機能し始めた点にあります。

米国では税制優遇措置(IRA法など)により、炭素強度の低い燃料ほど高いクレジット価値を生む構造が整っています。今回の「低炭素肥料サプライチェーン」の構築は、クレジットの創出だけでなく、エタノールを原料とする持続可能な航空燃料(SAF)の価格競争力を高めるゲームチェンジャーとなるでしょう。

参考:https://www.cfindustries.com/newsroom/2026/poet-winfield-trial

参考:https://corporate.exxonmobil.com/news/viewpoints/2025-taking-carbon-capture-and-storage-from-momentum-to-impact#Lookingaheadto2026