Coastal Bend LNGとSolvanic MIT発技術で「電気化学式CO2回収」実証へ テキサス湾岸でFEED調査開始

村山 大翔

村山 大翔

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米国テキサス州の液化天然ガス(LNG)輸出プロジェクト「Coastal Bend LNG」は8月18日、カーボンキャプチャースタートアップ、ソルバニック(Solvanic)と共同で、電気化学的アミン再生(EMAR)技術を用いた二酸化炭素(CO2)回収のフロントエンド工学設計(FEED)調査を開始したと発表した。商業規模のLNG基地で電気化学式のCO2回収を検証する初の試みとなる可能性がある。

EMARはマサチューセッツ工科大学(MIT)のアラン・ハットン教授の研究室で開発された技術で、従来必要とされる高温蒸気ではなく電力を利用してアミンからCO2を放出する。これによりエネルギー消費と設備コストを大幅に削減でき、運転条件や規模に柔軟に対応可能とされる。ソルバニックの共同創業者であるマイケル・マッセン=ヘイン博士とマイケル・ニッチェ博士はMITでの10年以上の研究を経て同技術の商業化に道を開き、今回のFEED調査に向けコースタル・ベンドLNGと技術導入のオプション契約を締結した。

Coastal Bend LNGのニック・フローレス最高経営責任者(CEO)は「天然ガス処理と自家発電設備の両方から排出されるCO2を捕捉する必要がある。燃焼後回収には従来方式を超える効率が不可欠であり、ソルバニックの経済性評価に強い期待を寄せている」と述べた。

ソルバニックのニッチェ最高技術責任者(CTO)は「我々は低エネルギー消費・高安定性・モジュール型拡張性を備えたEMARの技術成熟度レベル(TRL)4を実証済みだ。今回の調査はガス処理および燃焼後回収における経済分析を加速するものだ」と強調した。さらに、マッセン=ヘインCEOは「MITでの10年以上の研究成果を産業界に橋渡しし、コースタル・ベンドLNGの脱炭素目標に資することを嬉しく思う」と語った。

LNG産業はエネルギー多消費型であり、カーボンニュートラルLNG供給の実現にはCO2回収技術の革新が不可欠とされる。今回のFEED調査が成功すれば、LNG輸出基地における電気化学的CO2回収の実装が現実味を帯び、鉄鋼や化学など他の排出集約産業への応用にも波及する可能性がある。

今後、調査結果は2026年前半にも取りまとめられる見通しで、同社の最終投資判断(FID)に向けた重要な判断材料となる見込みだ。

参考:https://www.businesswire.com/news/home/20250818602209/en/Coastal-Bend-LNG-and-Solvanic-Announce-Carbon-Capture-FEED-Study